内容説明
敗戦後の日本、総アメリカ化へ向って一気に転身する渾沌として歪められたその精神構造を鋭く捉え人間存在の根源に迫る。「いきのびることは・なんたるむごいことなのだ」と刻んだ「焼土の歌」や「亡霊の歌」など韻文と散文とを一体化させ、「No.1航海について」から「No.10えなの唄」までの十章で構成。戦後の金子光晴を決定づけた自伝的傑作詩集。読売文学賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
勝浩1958
8
正直に言いまして、金子氏の詩は私には難しくてよく分からないところが多いのですが、「正しい意見とされているものを、吾人はよくよく警戒しなければならない。正しい意見はその正しさにもたれる重力でゆがみ、決してくるはずではなかった方角へ外れがちなのだ。僕らがふり返ってながめる歴史も、正義の捷利によって、人間の歴史というよりも、むしろ、素性のしれないばけものどもが、いかに多くの人間を愚弄し、人間を傷つけて、侮辱のかぎりをつくしてきたかという恥の記録、呪われた遺跡のようにおもわれる。」のような言葉に出会えて満足です。2014/03/05
かず
2
フランスの詩人を彷彿とさせる美しい象徴詩。生死とか、人間についてのことを、こうだと言いきる力強さがある言葉が好きだ。2012/03/04
若い脳
1
この哲学詩に触れ確信した。破壊、亡霊を超克するチャンスはまさしく今である。2011/09/30
桜井晴也
0
「僕? 僕とはね、からっぽのことなのさ。」2009/05/09