内容説明
明治三十七年記者・花袋は軍医部長森鴎外と同じ船で従軍。与謝野晶子の「君死にたまふこと勿れ」が論争を呼んだ。作家夏目漱石誕生の画期的近代小説『吾輩は猫である』他が発表された、戦争たけなわの明治三十八年一月、大塚楠緒子が「お百度詣」発表、晶子・登美子ら共著『恋衣』刊行、度重なる弾圧で「平民新聞」が終刊した。日露戦争下の激動の文壇と、露伴、蘆花、藤村、独歩、堺利彦、乃木希典等々の葛藤を描出。
感想・レビュー
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rbyawa
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i039、まず日清戦争があって続いて日露戦争があって、とわりとよく続けて語られている時代、のちに自然主義と呼ばれるような作家らがいまだ芽の出ない中で少しずつ立場を変えていくような時期、といったところかな。藤村は小説を書いて、花袋は従軍記者をやって、独歩は自分の雑誌を戦争対応にして、漱石さんは教師をやりつつ友人の子規との間で創作のやり取りをして、インテリ層である作家たちはともかく社会は急速に変化して簡易な読みやすい次の、教養ともなりうるような「小説」を求めることになるんだよなぁ。多分この巻の少しあとかな…。2018/08/01
AR読書記録
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『日本文壇史』全体を通して(ってまだ全然序盤だけど)、わたしはやはり退場シーン(端的に申せばお亡くなりになるシーン)と登場シーンが印象に残るわけですが。今巻でいうと、石川啄木登場。ま、ここは谷口ジロー『坊っちゃんの時代』での印象と同じだけれど、竹久夢二の登場シーンはけっこう驚いたな。まだほんとに登場だけだったけれども。退場は、『日露戦争』の時代ということでもあり、文士ではなく乃木将軍の息子たちとか。死の場面でなく、乃木将軍の存在、ありようが日本人の精神にどのくらい影響を持っていたか、たいへん興味深い。2015/05/08