講談社文芸文庫<br> 殉教・微笑

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講談社文芸文庫
殉教・微笑

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  • サイズ 文庫判/ページ数 333p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784061962514
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

キリシタンの女に想いを寄せる賎しい番所の捕方が狂気めいた一途なその女の俵詰め殉教を物語る「殉教」。小児麻痺児を持つ父親の屈折した心情を伝える「微笑」。他に「アメリカン・スクール」(芥川賞)「小銃」「吃音学院」「星」「憂い顔の騎士たち」「城壁」「愛の完結」収録。寓意性と微妙なユーモアの醸す小島信夫の初期作品九篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zumi

17
「吃音学院」が最高です。不安定なはずの言葉が、響き合い、音楽のように流れていくこの素晴らしい短篇は極上です。「愛の完結」で描かれている里子は、とにかく魅惑的です。これもすごい。ちょっと冷たい感じがたまらないです。復刊された『アメリカン・スクール』と同様、初期短編集であり、被っている作品も多いが、これも買うべきです。「憂い顔の騎士たち」の文章も巧みというか、なんというか...... 小島信夫、最高です。2014/05/19

gogo

13
初期の中・短編集。新潮文庫版『アメリカン・スクール』と、「小銃」「アメリカン・スクール」「星」「微笑」が被っているので、それら以外を読んだ。うち、「吃音学院」と「城壁」が面白かった。特に、「吃音学院」には、吃りという共通の不具を抱える登場人物たちの言動に強烈な皮肉や嘲笑が含まれ、私自身がもつコンプレックスの心情と重なり、たびたび失笑してしまった。この著者の中期以降の小説は、自身の体験との境界がかなり曖昧なものが多いが、これらの初期の作品にはまだフィクション性が残っているように感じられた。2016/03/29

OjohmbonX

10
何年か前に、旅行会社社員が遠足バスの手配を忘れ、しかし言い出せずに、生徒の自殺をほのめかすニセの手紙を学校に送って遠足を中止させようとしてあっさり発覚して全国ニュースになった出来事があった。小島信夫の小説の登場人物は、こうした人にちょっと似ている。ミスや弱さを言い出せずに取り繕ったり、強い謎のこだわりに本人が囚われたりして、事態がどんどん奇妙な方向に落ち込んで退っ引きならなくなっていく。外側からは「おかしな人間」に見えても、内的にはそうした人物に理屈があってどうしようもなく切実な世界を見せてくれる。2021/11/17

Tonex

7
「吃音学園」「憂い顔の騎士たち」「城壁」が良かった。特に「城壁」は戦争小説なのにゴーゴリやカフカを思わせる不条理な面白さがあって最高。主人公が不器用で屈折しているパターンが多いが、屈折具合が実に良い。初期の作品を読むと、小島信夫は普通にうまい小説を書く人だったことがわかる。素材が面白い。表現は平易だが文学的。この人の小説は後になるほど崩れていくが、基礎がしっかりとしているので崩れても小説として読めるのだろう。2015/02/05

三柴ゆよし

5
この人の作品はどこかズレている。どこが、どのようにズレているのかを説明するのは、ちょっと難しい。けれど、その「ズレ」こそが小島信夫の大きな魅力であることは間違いない。個人的に、「吃音学院」と「アメリカン・スクール」がフェイバリット。喜劇とはある意味では残酷なものだが、小島信夫はその残酷性にかなり意識的であるように思う。「吃音学院」のラスト・シーンは、かなりズシンときた。この余韻はしばらく尾を引きそう。2009/04/13

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