内容説明
敗戦の炎天下で聞いた“天皇の声”。少年の日々への回想。モラルとして新憲法を己れの核に据えた状況への発言から、文学、芸術、社会批評等の戦後世代作家の熱きメッセージ。「死者の奢り」「飼育」などの衝撃作で“学生作家”として50年代末に鮮烈に登場した作家が、長編「芽むしり仔撃ち」「われらの時代」他執筆に向けて全力疾駆しつつ書き綴った、著者20代の第1エッセイ集。
目次
第1部 「戦後世代のイメージ」といちばんはじめのコラム
第2部 強権の確執をかもす志
第3部 文学とはなにか?
第4部 性的なるもの
第5部 ぼくはルポルタージュを作家修業とみなす
第6部 クラナッハ論と芸術およびジャーナリズムにかかわるコラム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Syo
14
大江健三郎。 ノーベル賞作家。 のエッセイ。 というか20代の。 青くさい感じが凄いけど。 若くして、いろんなことを 考えてたのね。 ってことで、 これまた途中から 超高速モードで。2015/03/01
モリータ
8
自分の読んだことのない作家論をとばして全体をざっと読んだ(最後は読書欲が落ちた期間だったので息切れ)。そろそろと中期作品へ。2015/08/14
あかつや
3
再読。著者20代の頃の文章を集めたもの。今読むとなかなか趣深いものも多い。やはり本業の文学について書かれたものは切れ味が鋭いと感じた。大江の紹介する本は大体面白そうに見えるし、実際読むと面白いんだよなあ。一方政治についてはポンコツである。これは今に至るも一貫している。特にこの頃はデモに参加したりなどして運動に肩入れしているのもあって、文学におけるあの冷静な視点はどこ行った?と訝しく思えるほど。そんなんだからグループ内で特に権力を持つわけでもないのに前面で看板の役割やらされたりするんだろうな。難儀なことだ。2022/04/17
Gakio
0
卒論の参考文献として。 若い大江の思想・価値観が分かって面白い。 たいていは共感できるんだなそれが2017/10/17
@第2版
0
大江が22~29歳の頃に書いた評論集。なんと全部で650pもあり、当時の大江の思想を知るうえでは必須のものといえる。たとえば、大江文学の根底をなす性的人間と政治的人間、天皇観と戦後民主主義、連帯と広大な共生感、フランス文学と実存、広島長崎と核問題、少年期から青年期にかけての文学意識など、どれも自己告白的なエッセイであり、いくぶんパセティックで熱情的に書かれている。これを読んでますます大江文学の虜になった。しかし、前知識がなかったノーマンメイラーの批評や「自由への道」論、ロレンス論、ラブレー論等は未読。2016/12/10