内容説明
「死のうは一定」―姑息因循な“時代”の壁を蹴破り、闊達自在の“自由”を生きた、先駆する“近代”織田信長。天下周知の笑い者が、一瞬にして変貌、屹立する―奔放不羈で孤独な魂のみが生み得る秀抜な“変身”物語“聖なる野性”坂口安吾独創の“歴史”小説世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とし
19
キリシタンのイノチガケや信長を描く作品。純文学作家の歴史小説も面白いですね。信長は桶狭間までの活躍が描かれています。今川義元をうちとり、戦国時代に名をとどろかせました。全体的に天下統一まで、あと一歩のところまで行き着いた武将の青年期の姿を生き生きと描いています。坂口安吾さんが軍事的な天才信長を、歴史小説家とは違い純文学作家として現代風な感じで書いていて面白かっです。歴史を新しい角度からみれたような気がしました。坂口安吾さんには本能寺まで信長を書いて欲しかったです。蝮と言われた道三もいい味を出していますね。2017/01/22
NY
7
虚飾を一顧だにせず本質をとらえる、孤独を生きる、死を覚悟しておく、華麗に「変身」する。安吾の信長は大好きだ。言い訳を考えたり、人や状況のせいにしたり、格好つけたりするたびに、内なる信長が叱責してくれる。 久々に読んだカタカナだらけの安吾の文章に、なぜかわからないがホッとさせられた。 キリシタンの話は細かい部分で物足りない感が残るが、これほど多くの宣教師たちが禁をおかして日本に潜伏し、布教を試みた情熱には驚かされる。その時に自分がいてシローテ(シドッチ)と会っていたらやはり改宗していただろうか。2019/04/05
シロビ
6
「イノチガケ」~を目的とし、~という手段で殺された。殺した。それを延々と繰り返す。イノチをかける瞬間は心を動かすものがあるのかもしれないが、この繰り返しは無意味。なぜやめられなかったのかと思う。「信長」は信長と斎藤道三がかっこよかった。生きるための道を必死で考え走ってゆく。死を毎日感じながら、生きるために生きてゆく。何よりもイノチを続けるために。そうなってしまうのはいつの時代の戦争も変わらないんだろうなと感じた。今日は生き延びたと、感情的になる部分が好きでした。舞もかっこいい。2015/10/25
テツ
6
坂口安吾の時代小説。桶狭間の戦いまでを描く。安吾は信長が好きだったんだろうなと感じる。というか安吾がこういう人物であって欲しいという信長像を描いている感じか。信長道三とのやりとりは安吾のエッセイを読んでいるようで面白い。でも安吾は時代小説よりもエッセイ的な文章の方が好きかな。2015/05/10
出世八五郎
4
桶狭間は面白かったんだけど、短編集だと気付かずにイノチガケさえも信長の話だと思い混乱した記憶あり。