内容説明
足利義満の計略により喪失したかに見えた天皇の権威。しかし、将軍が求心力を失い幕府の解体がすすむなか、諸国の戦国大名が群雄割拠する戦乱の世が訪れる。そんな時流に乗じ、着実に果たされてゆく天皇による武家への逆襲―。日本史最大の謎の一つ、戦国期の天皇制の実態に迫り、天皇制存続の秘密を解明する刺激的な中世史研究。
目次
第1章 治罰綸旨の時代
第2章 官位をめぐる相剋
第3章 即位儀礼と内裏修造
第4章 京をめざして
第5章 信長と天皇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中島直人
5
室町幕府により一旦権威を奪われた朝廷が、幕府の没落に伴い、その権威を復活させていった時代が戦国時代だとする作者の見解。後、天下統一を関白に就くことで果たした豊臣秀吉政権樹立の経緯を見れば一定の説得力を持つとは思うが、その主旨に沿わせるため牽強付会のきらいが感じられ、やや説得力に欠けるように感じたがどうだろう。2014/02/16
K.H.
2
少し古い本だけど面白かった。大内氏や毛利氏、それから信秀時代の織田氏が朝廷に巨額の献金をしたり、それによって天皇の即位礼や内裏の修繕が為されたりと、合戦や政争中心の戦国史しか知らない身としては意外性があって楽しい。ただ、これは戦国期特有の力学の中でこそ朝廷の権威が生き残りの方策を採れたわけで、武家勢力に対しての「逆襲」と言えるのか、ちょっと疑問。あと、途中で紹介された伊達家からの使者の京都行きの旅程なども興味深かった。いろいろお金がかかるものなんだな。2021/09/10
玲
1
日本中が畿内化していたら、天皇制は崩壊していたかもしれない。2017/01/24
May
1
ちょっと時間ができたので12年前に読んだ本を紹介。戦国期(1493年から1568年(信長上洛))を対象とした天皇と大名権力との関係史論。信長が征夷大将軍位を望んでいたとする、通説に反する説も唱えられているが、お馬鹿本ではなく、真っ当な本。戦国期における「天皇制没落説」を否定し、国制上に占める天皇の権威は、戦国期を通じて、時期の下るにしたがって巨大化しているというのが著者の説。治罰綸旨や官位が持つ軍事的効用、大内義興、三好長慶、今川義元、六角義賢、織田信長の上洛の意味など、とても興味深い。2013/06/25
ソルト佐藤
1
武力も権力も失い、権威だけが残った!2008/06/06