内容説明
三十六歌仙絵を描いたとも言われる、歌人藤原信実の編んだ『今物語』は、53編からなる中世説話文学の傑作である。和歌や連歌を話の主軸に据え、女房の深い教養に裏づけされた機知に富んだやりとりなど、王朝時代の雅びの世界を織りなす逸話から、貴族社会の裏話や失敗談などを簡潔な和文で綴る。豊かで魅力的な風流譚・恋愛譚・滑稽譚の数々は、鳥羽院政期以降の社会と人々の生活の一面を活写する。
目次
弁の姿
忠度と扇
雪の朧月夜
蛍火
櫛をともす
うしろむき
降れや雨
夏引の糸
玉みくり
やさし蔵人〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
7
鎌倉時代の説話集。男女の機微の話から、神仏の霊験譚、和歌をめぐる話、尾籠ネタも含む滑稽譚まで、取り上げられる話題はさまざま。どれも簡潔で余韻のある文章がよいです。訳註と解説はかなり丁寧なので、古典が苦手な人にもお勧め。2017/09/25
紫暗
1
藤原信実が編んだ中世日本の説話集です。現代の短編集といった感じで、短いエピソードの話が53作収録されています。どれも当時の人々の価値観や常識などが垣間見えて面白いです。解説もしっかりしていますが、くどいと感じた方は読み飛ばしても大丈夫だと思います。古典文学全集などで読むよりはかなり読みやすくなっている気がした一冊でした。2015/03/19
乙女の祈り
0
原文は簡潔で読みやすいのですが、語釈が長くてくどい感じがしました。もう少し簡単にわかりやすく書いてあればもっと楽しく読むことができたと思います。 風流な歌物語を期待していたので、これとこれはいらないのではと思はせるような下品な話もあり、それは期待外れでした。それでも、有名な歌人達の逸話は面白かったです。2013/05/20
ちあき120809
0
儚い恋のお話に諸行無常の懐古譚、機知に富んだ偉人の英雄譚が、時には短歌を添えて技巧的に、時には面白おかしく表現を砕いて展開される。中には屁や大便、陰部を話の柱に据えたものもあある。貴族中心の文化を展開していた平安時代の文学とは打って変わり、鎌倉時代の文学は庶民にも親しまれるようになり、世俗的な内容となっている印象。平安から鎌倉へ、その時代の変化が伝わってくるような作品。2013/03/28
xin
0
中世初期の歌物語。まるで短篇小説集のような本。