内容説明
19世紀から第1次世界大戦にかけてドイツの大学は過激派学生が登場し、大学紛争が頻発した。放縦な生活を送る学生と専門研究に没頭する教授たちで大学は混乱をきわめていた。だが、こうした中で豪華絢爛たる学生文化と科学革命が花開いた。ドイツの大学は世界の大学のモデルとなり、憧れの的となったが、やがて軍国主義の波にのみこまれていった。ドイツの大学のおいたちを文化史的にさぐる好著。
目次
1 戦場からもどってきた若者たち
2 過激派学生の登場
3 武装する学生たち―ウィーンの学生軍団
4 紛争渦巻くベルリン大学
5 花開く学生文化
6 勉強文化と遊び文化
7 科学革命の拠点
8 学問大国を支配した男―“影の文相”アルトホーフ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Saiid al-Halawi
5
当時の学生の野放図ぶりだけでなく、ドイツ特有の私講師制とか教える側の事情も相当程度紹介されてる(私講師=ポスト不足のために純粋に講義のウデ一本で生計を立てる無給の教授予備軍)。そして過度な競争原理の導入を拒む学部教授会という教授同士の閉鎖的コミュニティから成される仲良し人事を強力に抑制した伝説的な文部官僚アルトホーフ。単なるビュロクラシズムではなく、大学側の人事権に対するカウンターパートとして機能していたらしい。2012/06/30
c****a
2
19世紀ドイツの大学に関する考察。決闘したりコールをかけて飲酒する学生組合の文化、当時のドイツの大学の私講師の給与体系(大学からの給与は存在せず、学生が授業にたいして授業料を払う)、文部官僚アルトホーフによって内輪人事から業績中心主義へと変化し、ドイツの大学にて自然科学研究が盛んになる過程等が描かれる。著者の『アメリカの大学』と比べると、本書で描かれるドイツの大学文化はアメリカのカレッジ的なそれと比べて日本の読者である私には容易に想像がつくものであった。 驚くべきことに初版はリクルート出版である。2013/09/07
stateishi
1
いま潮木先生の本がマイブームなので、アメリカの大学に合わせてドイツの大学も読了。2009/10/28
東側ギャン
0
勘違いした特権意識のオンパレード、各種のろくでなしが見られます。日本の旧高等学校の学生もひどかったって有名だけどドイツの方はそれに輪をかけてひどかったんだ・・・と2016/05/05
三山
0
19世紀初頭から20世紀の初頭までのドイツの大学の文化史、特に学生文化を中心に描いている。決闘、飲酒、革命、学生団体…今の日本の大学にも通じるものが数多くあり、そして今の日本と同じくそれに対する賛否両論が存在した。後半部で触れられる科学の中心地としてのドイツの大学がどのように準備されたのか、それは結論の出る問いではないのだが、人のエネルギーを収束させ爆発させるものは制度や環境のみではなく、人間そのものの存在が肝要であるとの指摘は、教育を考える難しさそのものではないのだろうか。2015/05/12