内容説明
近代日本第一等の思想家福沢諭吉。その思想と行動は日本社会の専制を痛打し人間の尊厳・自由・平等を育んだ。彼なかりせば私達の国の迷蒙はいつまでも深く暗かったに違いない。この偉人の直近にあって親しく謦咳に接し居常に触れ、その精神を最も良く体現した碩学小泉博士が、敬愛をこめて綴る等身大の福沢諭吉像。最高の理解者によって語られる福沢の先見と洞察・高潔な出処進退は不滅の光輝を放つ。
目次
福沢研究の方向について
福沢諭吉
福沢諭吉書翰解題(『福沢諭吉の人と書翰』解題)
福沢諭吉『愛児への手紙』(解題)
発見
解説・師弟のPiety(敬愛)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
6
経済学者であり七代目慶応塾長による福沢論。「固より福澤はマルクシズムの形而上学を取らぬであろう。その世界史の経過段階は過去も未来も、すべて既に計画に従って確定しているものであるかの如くに説く歴史哲学、有史以来人類社会を支配した、生産力と社会形態との衝突による弁証法的発展なるものが、プロレタリヤ権力による共産主義の実現と共に、一朝忽然として永遠にやむとするかの如き考え方は、固より「理と数」とによらず、また「証拠なき」思弁として、それこそ歴史の出生地を「天上の雲霧の中」に求めるものとしてこれを却けたであろう」2023/02/06
ダージリン
3
著者の父が福澤諭吉の弟子で、著者自身も幼い頃に福澤諭吉と接する機会が多々あったという。全体に福澤諭吉への敬意に満ちているが、実に子煩悩だったことなど福澤諭吉の人間像も窺えて興味深い。東洋に欠けたるものとして福澤諭吉が挙げた「有形において数理学と無形において独立心」という言葉が本書でも何度か取り上げられているが、慧眼と言うほかない。これらは現代日本の課題でもあるように思えた。2019/07/29