内容説明
戦後の都市開発は生産と利便に傾き、都市に対する文化的構想力を喪失していた。本書は、近代が生み出したそのような「計画された都市空間」ではなく、「生きられた都市空間」、たとえば神社や寺の境内、鎮守の森、道、広場等の再発見によって、人々が住みこなし、多様な意味をつけ加えていく「スミカとしての都市」の復権を目ざしたものである。著者のファンタジーに満ちた自由な発想と提言が随所に息づく上田都市論の原点をなす好著。
目次
序 日本の都市を考える
1 日本都市論
2 空間の論理
3 文化財の保存
4 日本の土地問題
5 新しいスミカとしての都市
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
8
「人間が住みだした以後の時代を、国土開発の面から考えてみると、おおよそ次の四つの時代にわけて考えることができる…第一は山の時代…第二の時代は水の時代…猿股神社の古地図が示すように、かつて濃尾平野は一面の海であった。しかしそれも木曽、長良、揖斐の三川が運ぶ土砂によって沖積地帯となり、そして人々の努力によって、それは沃野と化していった…道の時代、とくに東海道が交通動脈となっている今日において、岐阜県の影が薄れてくるゆえん…しかし、もう一つの時代、第四の時代が考えられる。…情報産業の時代…つまり都市の時代」2018/12/27