出版社内容情報
【内容紹介】
戦後30数年を経た今日、外部の何ものかによって生き方が決定され、人々は敷かれたレールの上を走っておればよい時代は終ったはずである。しかし日本人は依然として画一的な生涯をめざす傾向から脱け出せないでいる。その背景には、われわれ日本人が無意識の内に従っている或る種の共通の人生観があるのではなかろうか。本書は、そういう「日本人の伝統的な人生観」を再把握し、新しい生き方への出発点を示すことを目標としている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
25
空気の研究で知られる著者が人生を振り返って、日本人の人生観を考察していく。著者の根底にはキリスト教があり、それが日本人の人生観考察に大いに役立っているように感じる。日本人の多くは、歴史というはじめから終わり、終わりを越えてというキリスト教的な思考をしないために、未来の予測が苦手で、変化した状況に適応するのは得意だと指摘する。太平洋戦争敗戦や受験競争への没入など日本人が経験する諸問題に陥らないようにするためには、このキリスト教的な物の見方もしてみることが重要と推奨する。2016/12/06
半木 糺
9
山本は戦後日本が教科書に墨を塗り、事実を隠蔽したことに疑義を呈した上で、日本に欠けているのは「歴史そのものに注をつけ、その記述を未来へと残していく」事であるとしている。これは現在にも通用する知見である。元号廃止論者に対する反論「文化としての元号考察」も非常に有為な論考である。現在の日本の不幸は山本のような論者がいなくなってしまっている点にもあるのではないか。2013/03/26
Tenouji
6
終わりがない、という考えが、そんなにも深く影響しているのか…2017/07/11
Yasomi Mori
5
僕たちは意図的に何かを「する」よりも「ごく自然にそうなる」ことをよしとする。それは《「自然」を「完成した秩序」と考え「不自然」を「未完成の秩序=欠陥のある秩序」と考え》る日本人独特の発想だと著者は指摘。自然という概念には、歴史という発想が入ってこないが、このことと日本人の変化に対する対応力の高さとは関係がある。環境への順応は、一見大変化だが、自己の本質的なものを変えまいとする考え方が基本にあるため、社会を固定化する。過去を消し去る民族性。歴史軽視と資本主義との親和性は高い。著者は『空気の研究』でお馴染み。2015/12/17
hirotter02
4
山本七平が生きた戦前から戦後を振り返って日本について論じている。今を振り返ってみても、この国はほんと全く変わってない。乱暴に言うと江戸時代から変わってないんじゃないかと思い知らされる。というか変わりようがない、変わる術をもたいない国なんだなということが書かれている。浅学のため海外が変わってきたのかどうかはわからないが、ネットが出現してさらに「さまよっている」印象。これが1978年に書かれているわけで、山本七平という人の凄さがわかる。2016/12/03