内容説明
天地創造から6000年で人類は終末を迎えると聖書はいう。では、アダムとエヴァより古いエジプトや中国の歴史はどうなるのか。聖書と現実の整合性を求めて揺れ続けた西欧知識人の系譜。
目次
第1章 普遍史の成立
第2章 中世における普遍史の展開
第3章 普遍史の危機の時代
第4章 普遍史から世界史へ
第5章 普遍史と万国史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
39
聖書をベースに世界史が語られます。普遍思想と有限時間を対比させることで、キリスト教的歴史観が何かと問うのが興味深かったです。2022/10/01
白義
17
聖書にしたがい、世界万有ありとあらゆるものの歴史を記述していく「普遍史」。かつてキリスト教世界において歴史のスタンダードだった普遍史の概念だが、その成立の初期から聖書よりも一見古いエジプト史の問題など数々の難題に直面することとなった。中国史や新大陸の位置付けなど普遍史が自らの危機とどう向き合い、そこから近代的な「世界史」が誕生していったのかを追う知的ドキュメント。ニュートンが普遍史学者としても大家であったことや、プロテスタントとカトリックの宗教対立がかえって聖書の権威を内側から揺るがしたことなど中身は濃い2018/05/16
Shin
17
「普遍史」なる言葉を初めて知り、世界の歴史を叙述するという行為に対するキリスト教(というか聖書)の影響の大きさ、深さを今更ながらに認識した。「◯◯史観」などというレッテル貼りをしがちな割に、何を持って世界史のスタンダードとするかについては無頓着であった自分の浅学がちょっと恥ずかしくなる。世界史が、宗教の軛を逃れて社会科学へと脱皮していく過程を辿る探訪は知的興奮に溢れ、メタレベルで歴史というものを俯瞰することの愉しさを再認識した。好きだなぁ、こういう本。2016/08/11
Kazehikanai
11
聖書とそれを議論してきた西洋の普遍史、年代学。これが意味するのは、長らく人類の中心と自己認識してきたヨーロッパが、キリスト教史観を通して、世界をどう見て、どう記述してきたか。中国やエジプトの古さに戸惑い、拒否したり容認したりしながら、聖書に記された歴史的事実とされるものを、神話として認識し直したりしてきた議論の過程は、世界の位置づけを見直してきた過程であり、非常に興味深い。本書で触れられる専門的な部分は流し読みにしても刺激的でおもしろい。世界の普遍史は、現代もさらに変遷していく。2020/10/13
shizuca
8
聖書の記述を年号で表そうとして天文学とかも駆使しちゃう、その労力がすごい。ニュートンあたりまでは聖書の記述が本当にあったと考えるのが普通というのに驚き、1700年代からの「普遍史」「世界史」の動きはとても楽しかった。中国史が聖書の時間より古いことを無視しちゃうとかエジプト史をテキトーに短くしちゃうとか、そんなのあり?という技を使っていたとは面白い。今当たり前のことも昔は当たり前ではなかったんだと気づける一冊。2017/03/20