角川文庫
シュウシュウの季節

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  • サイズ 文庫判/ページ数 230p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784042834014
  • NDC分類 923.7
  • Cコード C0197

内容説明

七十年代、文化大革命末期。都会の子供に労働を学ばせようという政策により田舎に送られた街の少女・文秀。彼女は馬の放牧を習うためにさらに皆と離れ、独り草原に住む中年男・老金の下で暮らすことになる。本部から遠く離れた土地で老金と二人きりの生活に戸惑う文秀だが、彼女は次第に草原に、そして彼自身になじんでゆく。だが、やがて文革が終焉を迎えた時、彼女の、そして彼の悲劇の運命の輪がゆっくりと廻り始めた…。歴史に翻弄される少女と運命を容認していきる男を鮮烈に描く表題作「シュウシュウの季節」他五編を収録した珠玉の短編集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

paluko

3
映画「シュウシュウの季節」のあらすじだけ仄聞したことがあり、内容が政治的に不適切とされアメリカに渡る、という著者紹介から政治がらみの作品が多いのかなと思ったけど、全然ちがった。この短編集の全体に通じるテーマは、といえば「性」。それも偽装結婚とか病気とか倒錯とか、一筋縄ではいかないそれ。神聖と卑俗を完全にあわせもった自称「ただの踊り子」孫麗坤と青年将校の恋物語「白蛇」がすごくよかった。2020/12/17

saba

3
映画「芳華」が良かったので原作を探していたが、芳華は邦訳まだのよう。で、同じ作者のこれを。「シュウシュウの季節」も映画化されたようだが、確かに、草原と空と山と馬と美少女とって絵的にはすごく良い。が。中身は激鬱…高邁な(主義者にとっては)理想を掲げて始まったはずの革命も、末期末端では統制は緩みに緩んで、怠惰と我欲とがあるばかり。とりあえず、彼女の弱味につけこんだ小役人の男共は、全員馬に踏み潰されろと願うことには何の躊躇もない。なお作者は中国からは脱出せざるを得なかったようで、確かにそうなるだろうな…。2019/06/10

日暮里の首領様

2
文革期、革命の名の下に下放された少女が余儀なくされる、苛烈な「枕営業」。同時期に革命の名の下に収監された、性依存症の元踊り子。改革開放の80年代、富に傲れる上官を感極まって殺してしまった貧しき少尉は、今まさに銃殺される。そしてチベットの「人民解放軍」を取り囲む、民族的なわだかまり…。「階級闘争」の下にひた隠しにされてきた、性・経済・民族などの中国が抱えるさまざまな矛盾を抉り出す、グロテスクなまでにリアルな短篇集。翻訳も素晴らしい。2012/12/18

Jun Shino

1
近代の中国、少女たちの物語。テンポや訴えるものに、なぜかケン・リュウを思い出した。 表題作は映画化され、アカデミー賞で多くの賞を獲得した。短編集でどの作品にも少女が出演し性的な描写がある。文化大革命で失脚し囚われた舞台女優「少尉の死」問題を抱えた家に嫁いだ娘「しょせん男と女しか」オーストラリアで金のためにイタリア人の老人と結婚する子「少女小漁」と、重い現実の中で主人公たちは生きる。むしろ「しょせん男と女しか」や「少女小漁」のほうが向いてるんじゃないのかな、と思ったら「少女小漁」もまた映画化されたそうだ。2018/04/05

キムチ27

1
以前見たDVDを原作で辿りたいと思い読んだが・・悲惨と云うか、惨い。国が、体制が、民族が異なりすぎて安っぽい同情をすることもはばかってしまう。 映画の映像がよく出来ていたので、後半からどっと変わる展開の落差。人間がぼろ布の如く、滅して行く。 中国の作家は好んで「性の描写」に取り組み、雌の立場からの性現象を捉えている・・とあるが、当作品も作者は一種の生贄としてシュウシュウを描いている。以前も思ったが、訳者、映画化の監督の優れた解明力に驚く。そして当局の圧力も。よくぞ、陽の目に当ててくれた。。2012/11/23

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