内容説明
「むかし、あるところに、マーリアという名の売春婦がいた」。マーリアは、ブラジルの田舎町に育った美しい娘。恋愛に失望し、スイスの歓楽街で売春婦をして暮らしている。セックスによる陶酔など一度も味わうこともなく、日記帳だけに心を打ち明ける毎日。だが運命的な出会いが、マーリアに愛の苦しみと痛み、そして至上の喜びをもたらそうとしていた―。
著者等紹介
コエーリョ,パウロ[コエーリョ,パウロ][Coelho,Paulo]
1947年ブラジル、リオデジャネイロ生まれ。世界中を旅した後に音楽とジャーナリズムの世界へ入る。87年、初の著書『星の巡礼』(角川文庫)を発表して注目を集め、88年に刊行した『アルケミスト』(角川文庫)が世界中でベストセラーになる。現在は世界を旅しながら精力的に執筆活動をつづけている
旦敬介[ダンケイスケ]
1959年生まれ。作家・翻訳家としてメキシコ、ケニア、ブラジルなどで暮らしたのち、現在、明治大学助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaichiro
103
名作アルケミストを著したコエーリョの人間賛歌。男性作家が娼婦マリーアの視点を借りて、男性の性に対する姿勢を著す。男達は家族を養い、子供達の泣き声を我慢し、デートしたいと思う女性を毎日何十人と目にして、万一のチャンスのために高い服を買い、エクササイズ、権力をめぐる巨大産業まで維持する^_^誇張し過ぎの感はあるが、その後話は展開し、感じとる力を待っている人は、相手に触れなくても心地よい感覚を得られる。行為自体の快楽より、そうしたいと思う熱情、愛が大切なのだと説く^_^ブラジルの熱き魂はここでも健在でした^_^2019/07/16
びす男
84
売春婦になったブラジル人の女性が、愛を再び見いだすまで。「ふたりとも、人生で最も大切なもののひとつが死んでいくのを放置している」。疲れきり、諦めに支配された人たちは「放置する」ことで、愛することを忘れていく。その危うさと悲しさが、主人公の足取りから伝わってくる。生きる以上、きっと幸せにならなくてはならない。そのためには、愛を受けとめられるように心を開いているべきだ。もうひとつ。男女は互いの体について、もっと知ろうとしなければいけない。またひとつ、自分にとって特別な小説と出会えたことに感謝している。2016/10/31
Shoji
66
性行為の時間は、前後の冗長した時間を除けば正味11分間らしいです。その11分間の享楽的な過ごし方について書かれた作品、ではありません。娼婦である主人公がセックスというものについて、悩みぬく様子が綴られています。その内容たるや哲学的な程です。多分に心理的なものですが、「性の悩み」は避けて通れないもの、改めてそう思いました。2018/05/21
えりか
48
暖炉の明かりだけが揺らいでいる暗い部屋に男と女がいる。沈黙の中、二人は見つめあう。男は女を瞳で脱がし、女もまた瞳で男に抱かれる。瞳だけでお互いを認めあう。情熱が渦巻き、体が熱くなる。触れてほしいと思う、触れたいと思う。その官能。肉体的な快楽を超越した魂の快楽。肉体の快楽は11分あればこと足りる。雑技団なみの柔らかさや個人的マニアック世界への芝居があればなおよし。でもそれだけじゃ、心はみたされない。もう一人の自分自身と出会い、繋がれた時にだけ心も体も満たされる。その時、11分は永遠に感じられるはず。2016/06/30
はる
28
セックスについて真正面から考えさせられる話。確かになんでこんなに人間の欲求に繋がっていながら疎まれる話題なんでしょうねえ。性的表現多すぎてちょっとサクッと読み飛ばし多かったかもだけど、主題は「選択のタイミング、重要性」かなあと。 スイス、是非行ってみたいなあと思わせる湖畔の印象。美しい。2024/01/02