角川文庫
蔵の中/鬼火

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  • サイズ 文庫判/ページ数 282p
  • 商品コード 9784041304211
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Kircheis

113
★★★★☆ 幻想的で、かつ一捻り加えられた中短編を集めた作品集。 個人的に凄く心に刺さる話というほどではないが、どれも「すべらんな〜」という感じ。 唯一の中編となる『鬼火』はかなりの力作で、純文学と読んでもいいくらい人間の愛憎が描かれていた。 『蔵の中』は、1人の美少年の狂気と死生観が描かれたこれまた純文学的な作品だが、個人的には余り響かず。 『蝋人』はプロットは1番お気に入りの作品だが、最後だけ不満。 その他に三編収録されており、どれも良作。2019/10/20

めしいらず

68
金田一も由利先生も登場しない著者戦前の代表作2編を。「鬼火」従兄弟二人が終生苛まれた優劣の呪縛。一人の悪女が更に二人を焚きつける。三人の起こす化学反応が彼ら自身を破滅へと導いていく。相手を貶めたい。弱みを見せたくない。唯それだけの為に堕ちてゆくしかない彼らの滅びの美学。底なし沼が暗示的だ。「蔵の中」空気の澱む薄昏い蔵の中から死に取り憑かれた少年が覗き見た犯罪。複雑な入れ子構造の小説内小説(内小説)の眩惑。そこに予め示されたその顛末。そして真実とは。鮮血の赤に彩られた美意識のラスト。著者の最高作だと信じる。2019/04/30

レアル

64
短編集。横溝氏の探偵小説とは違った趣と、まさにおどろおどろする物語で憎悪や陰湿そして復讐劇が描かれていて、私はどちらかというとこういった横溝氏の薄暗く隠微な世界観の作品の方が好きかな。ホラー要素のモノは嫌いだが、この美しい幻想的な世界に浸りたく、年始から1作1作読みふけった。この世界観こそ横溝氏の特有のものだと思う。2017/01/03

めしいらず

57
表題2作以外を再読。「かいやぐら物語」熱に浮かされたような語り口がこの幻想譚に似つかわしい。月明りに茫と照らされた砂浜で男が笛の音に誘われ出会った女は果たして存在したのか。ゾッとするような美へと結実。「貝殻館綺譚」劇的な冒頭から急速な展開。殺人者と目撃者の駆け引き。結末は後出しジャンケンのようで狡い。ノックス先生ならカンカンだ。「蝋人」横溝的「春琴抄」の趣。不義の恋。根深い嫉妬がさせた凄惨な報復が結局は二人をプラトニックな愛へと導く皮肉。「面影草紙」複雑な家族の成り立ちが招く悲劇。人の情念を描いて流石だ。2019/05/20

中原れい

55
場違いな「みずみずしい」という言葉が浮かんだ作品集。どの作品も短くても情感たっぷりな描写で容赦なく人の業を描いて、戦前の作とは思えない今日性もある良作ぞろい。幻想寄りだが昔のサスペンスドラマ風味のものもありました。長くかかっちゃったけど大満足。2020/04/02

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