感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユーカ
23
『青鞜』の同人、大杉栄の三人目の女―伊藤野枝の半生。「葉山事件」で筆が置かれている。前半の緻密さに比べ、後半は情熱的に筆を走らせたような感じを受けた。女性の転換期と言われるこの時代の「新しい女」とは、身の内の野性の一部分に感受性の強かった女たちのような気がする。それは肩に力の入った生き方で、彼女たちはどこか欠落している。なんだかとても飢えている。そして、体の構造上、ある部分でどうしても受け身にならざるを得ない、女の物悲しさ。タイトルどおりの「乱調」に、半身を引いてしまい、わりと冷静に読んだ。乱調の読後感。2015/06/26
kaoriction@感想は気まぐれに
20
「青鞜」まつりに際し、軽く再読。私にとっての「青鞜」入門の書。すべてはここから始まった。定期的に訪れる「青鞜」まつり。いまでも立ち還る時はこの作品。ずっと積んでいる続編『諧調は偽りなり』もそろそろ読まなければ。しかし、なぜ私はこんなにも「青鞜」の面々に惹かれるのだろう。集う彼らの人生、伊藤野枝の、らいてうの、大杉栄の、市子、紅吉、辻、関連するすべての人の人生の何が魅力で、何に魅了されているのか。わかっているようなわからないような… だからこそ、繰り返される ひとり「青鞜」まつりなのだけれども。2017/08/30
MIHOLO
16
濃かった...最後の方はもう誰が誰と付き合おうがどうでもいいんですけどって気持ちになり、恋愛より主義で結び付いたのではなかったんかね?と、そちらの方はどうしたのだ?と聞きたい位だった。野枝を大竹しのぶさんとか演じたら上手そうだな~2021/03/15
nao1
14
甘粕事件で夫婦で虐殺された運動家、大杉栄と伊藤野枝のドキュメンタリー。愛やジェンダーから自由になるということはこんなにも混乱することなのか?瀬戸内さんが書いたからなのかフィジカルよりでした。平塚らいてう、伊藤野枝、女傑と思っていたひとたちの、意外な未熟さ、煩悩があますところなく描かれていた。2017/05/19
松本直哉
13
今で言うポリアモリーだろうか、互いの別居と経済的自立、性的自由を含めた互いの自由の容認を前提とした恋愛関係を主張する大杉栄。すべての権威と体制を否定するアナキズムの立場を徹底すれば排他的な一夫一婦制も否定の対象となる。だが実際は経済的に自立していたのは市子だけだし、野枝に入れあげて同居を続ければ他の人の嫉妬を必然的に招く。子供が生まれればさらに事情は複雑になる。掲げる理想は高邁だけれど結局男の身勝手に見え てしまう。やはり一度に一人以上を愛するのは無理なのだろうか。2016/08/28