感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
182
よくひとの死ぬ時代だった。病院のなかでも外でも、毎日のように誰かしらが死んでいった。病気で、空襲で、戦争で。たださえ死と身近な医師たちは、命を軽んじるようになった。捕虜の生体解剖。そのデータが戦場の多くの命を救う、などといって、おぞましい実験はたやすく正当化されていった。地獄への道はいつだって善意で塗り固めれている。その道へふたたび踏み込まないために、わたしたちは十分気をつけなければならない。その実験をやった人びとだって、わたしたちとどこもちがったところのない、普通の日本人であったのだから。2018/07/08
Voodoo Kami
12
3月読書会本。去年ETV特集で見た戦時中の九大生体解剖事件をベースにした小説だという前知識のみありました。普通に読み始めて「僕」が主人公かと思いきや、時代は戦中へ。基本は勝呂という研究生主観の文章、ときに上田(看護婦)、戸田(研究生)主観の文章が入ります。題名の「海」と「毒薬」はそれぞれ何を射しているのか。事件の呵責をその後もずっと背負っているらしい勝呂を中心に据え、「罰は恐れながら罪を恐れない習性」を戦争という虚無の中でも発揮した日本人の姿を淡々とした筆致で描き出す、とても恐ろしい小説でした。2016/03/18
ブルちゃん
11
怖い‥読んでいる間ずっと怖かった‥。小説とはいえ、事件の部分は事実みたいだ。この生体解剖が後に、医学の発展に繋がったのか?分からないけれど‥こういう時代だったんだ。私もこの時代であれば、戸田のように良心が麻痺し、残酷さも恐怖も何も感じないのかもしれない。また一つ事実を知れて良かった。2019/08/16
いぼいのしし
9
戦争という特殊な環境のなかで、倫理観が麻痺してしまったのか、それとも…。2018/04/11
luther0801
7
戦時中、外人捕虜を生体解剖に処した話。実話を元にしたらしい。何とも言えない読後感。2015/02/22