内容説明
山が鳴り、石が泣く!中世人が体感し、未来を占った不思議な音、震動。神仏が伝えてくれる鳴動で、国は人びとは何を予知したか?現代人が失った感覚を、日記・記録や伝承から丹念に再現する。
目次
序章 山が鳴り石が泣く
第1章 戦国大名と落城
第2章 藤原氏と源氏
第3章 塚や墓と鳴動
第4章 社寺が知らせる異変
第5章 災害の音・幸運の音
第6章 鶏の声の意味するもの
終章 中世から近世へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
8
石鳴りなど、危機に際して怪音などでそれを知らせた事例集。信州大の人らしく、とにかく信濃甲斐の事例が多い。諏訪氏滅亡の二年前と前年に、宮が三度鳴った事例など。熊本の城林城などは城自体が信仰の対象だったそうで興味を引く。「北安曇野郡八坂村左右の天狗山 山に天狗を祀った宮がある。この天狗は事変や災難が起きようとする前に村人へ知らせた。日清や日露の戦役の時は、本社で昼間は団扇太鼓をたたく音が誰にもよく聞こえ、夜になると灯明の火をともすようにも見えたという。この天狗社は数百年前に建てられた石の祠である。」2021/11/09
AR読書記録
3
わりと後半まで事例集みたいな感じで、城割とかは知らなかったので「ほう!」と思ったけれど、ちょっと読み飛ばし気味だった。が、最後の最後で、鳴動する中世と“科学的”にそれを見る近世の画期であるところの戦国が出てきて、先日の読書(百姓から見た戦国大名)ともちょっと繋がって、がぜん楽しくなった。戦国時代、もっと追求すべし。それにしれも、怪音。“科学的”説明によるなら今も聞こえてもおかしくないと思うけど、人工音に紛れてあまり聞こえないけど今もどこかで鳴ってるのかな。2019/06/04
邑尾端子
1
中世には、祠や墓や塚などの祖先を祭った場所や、岩や海や山などの自然物が頻繁に「鳴動」し、人々に災厄の到来を告げるものとされた。近世以降は殆ど注目されなくなるこの「鳴動」がなぜ中世には多数記録され国家レベルの重要な事件として注目されたのか。それを史学・民俗学の観点から論じた一冊である。本論は非常に興味深いが最後の一文で台無し。君が代に対する著者の考えなど本論の内容とは全く関係ないので不要な一文だと思うが、なぜこういったことをわざわざ論考の末尾に書かずにはいられない人が多いのだろう。2012/11/23