目次
1 黒い問題
2 影を浪漫化する
3 破壊的な看護婦と鮫の親切
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ecriture
8
アメリカ文学における「白さ」は異なる大陸から連行してきた奴隷の「黒さ」によって生み出され、強調されてきた。アメリカが標榜する自由や民主主義なるものは常にそれ以外のものによって強調され、不安を拭い去る必要があった。ポー、ホーソーン、トウェイン、キャザー、ヘミングウェイらの作品を具体的に分析しし、具体的な黒人の生活ではなく、奴隷所有者やそれを書く作家の心理状態・行動・染み付いたイデオロギーを解き明かしていく一冊。2013/08/02
壱萬弐仟縁
8
1992年初出。「奴隷の心理、想像力、行動を研究した学者の業績は、貴重(略)。しかし、人種差別のイデオロギーが奴隷所有者の心理や、想像力や、行動に及ぼした影響を見ようとするまじめな知的努力も、同じように貴重なはずだ」(32-33ページ)。支配する側、される側、双方の心理の交錯が大切と。「奴隷制ほど自由を際立たせるものはない」(68ページ)。それほど対極にあるものでもある。今から思えば、アメリカが世界一の経済大国になれたのは、奴隷をただでこき使った結果だったのでは? 剰余が膨れ上がるのは、犠牲の膨張である。2013/02/20
カイエ
5
読み友さんのお薦め本。難しかった!けれども有意義な読書でありました。「ごく最近まで、そして作者がどの人種の人間であるかには関わりなく、事実上すべてのアメリカ小説の読者は白人として位置づけられてきた」と著者。そして白人のための物語のなかでは、黒人はある種のイメージ、白人の優越性を際立たせるための存在として描かれると。文学だけでなく、アメリカで作られる映画やドラマも基本的には白人向けなのでしょうね。それが翻訳されて日本に入ってくる。私は幾重にもフィルターがかけられたアメリカを摂取していたのだな。2020/11/13
ゆずこまめ
4
文章が読みづらいです…黒人が、白さが象徴する自由を、理性や知性を、豊かさを際立たせる存在でしかなかったなんて切ない。2014/12/24
Naosan_5 .Jeweler
0
やっと読了しました。正直言って本文は、相変わらず難解な言い回しの印象です。 今回は大社淑子さんによる訳者あとがきの方が、シンプルで好感でした。 例えば『(白人も黒人も)記憶していたくない事柄…だから書いた』『差別は白人の側だけでなく黒人同士のなかにも存在する』などの印象的なフレーズが、ずっと記憶していたいと思わされます。「アフロフューチャリズム」など表面的な物事の理解とは違う、物事の本質がある気がするので。2023/06/30