内容説明
日本はなぜ無謀な戦争に突入し敗れたのか―ヨーロッパ諸国から同時期に文明国と認められた日米宿命の対立の根底には、中国問題があった。その端緒「対支二十一ヵ条の要求」から敗戦に至る軍人、政治家、思想家、ジャーナリストたちの言動を検討し、誤りを摘出する。多彩な登場人物が織り成す壮大な思想のドラマは論争を呼ぶ。
目次
日米の仮想敵国
発端としての「対支二十一ヵ条」
アジアの帝国主義
「日米衝突」のシナリオ
満州事変というファシズム
世界戦争のプロローグ
「侵略」という認識
統帥権干犯の思想
軍部の独裁化をめぐって
精神的鎖国としての国体イデオロギー
日本の「世界史」
大東亜戦争の「開戦の詔勅」をめぐって
時代思潮としての「死の哲学」
外の力
戦犯とは何だったのか
著者等紹介
松本健一[マツモトケンイチ]
1946年群馬県に生まれる。東京大学経済学部卒業。麗澤大学教授、評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
31
国際的な視点や戦略眼が欠如し、夜郎自大になってしまったことが原因なのだろうと感じました。過去の失敗をどう教訓にし活かしていくのかが必要であり、現在も行動は異なっても根底は同じなのかもしれないと思いました。時代思潮としての死の哲学、戦犯とは何だったのかが面白かったです。2023/01/18
きいち
14
こんなにたくさんの「現実を冷静に見つめて行動する当事者たち」がいて、それでもなお何故、方向転換ができなかったのか?という次の疑問が湧きあがってくる。文明化=帝国主義の状況で「合理的」に突き進んできて、だからこそ結果を出していたにもかかわらず、その到達点が「生きて虜囚の辱めを受けず」の心性や「動機があっても目的がない戦争への突入」といった様々な非合理。集団感情のマネジメントとは、それほど困難なこと。でも、わかりやすい解決に短絡することは、この時も、逃げだったのだ。「今」を考える上でとても役立つ刺激的な本。2012/11/24
モリータ
8
学部の時に一度目を通したが、日本史の用語集が家になくてロンドン軍縮条約〜統帥権干犯の話がよくわからなかったので、その部分(八章)のみ読み直した。あとから考えれば軍部暴走や無理な作戦につながるような、ものすごくデリケートな導火線を政党が政権奪取の道具にしていた、という流れ。このあたり、やはり海軍軍令部の位置づけが勉強しないとピンとこない。そして中島知久平の立志伝もそう無邪気には読めない。2013/10/15
Ikuto Nagura
7
明治維新以降、列強に追いつき文明国になることに全力を投じ、第一次大戦時には五大国に数えられるまでになった日本。その過程である日清・日露戦争の開戦の詔勅では「国際法に則った戦い」を強調していたという。ところがその後の日本は、文明国のルールたる国際法や道徳から逸脱し破滅に向かう。石橋湛山や斎藤隆夫・重光葵らによる実利主義に基づく軍部批判には説得力があるのに、石原莞爾や北一輝らの科学的精神を欠いたファナティックな夢想の方に国民は乗ってしまった。いったいその原因は何だろう。私たちが再び過たないために考え続けねば。2016/02/09
Mark.jr
5
昭和の大東亜戦争の開始から終結にかけて日本という国に何が起きて何を間違えたのかを検証・考察した本です。本書のタイトルにもある失敗の要因は色々ありますが、大きかったのは大東亜戦争において、国際的な視点が欠如していたこと(国際社会の一員ならば、日本精神など持ち出さず、その国際法のルールに乗っ取ってやるべきだという話)。つまり、精神的鎖国の状態になっていたということです(もしかしたら、今もそうなのかも)。歴史に疎い私などには馴染みのない名前が大量に登場し、読むのにはてこずりますが、著者の真摯な姿勢を感じます。2020/06/27