出版社内容情報
つねに声なき民の側に立って歴史を見つめ続けてきたノンフィクション作家が,今初めて自身の今日までの人生と家族の歴史に焦点をあて,「昭和」という時代の検証に挑む.作家活動の原点を示す記念碑的作品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しげ
56
生まれ育った「昭和」と言う時代、特に戦前、戦中、戦後をもう少し知りたくて手に取りました。映像化もされた「妻たちの226」著者の澤地久枝さん(9条の会でも有名)満州での生活も語られています。明治維新から引き継いできた戦争を含めた日本の流れは大陸進出、恐慌が引き金となり大戦に至ると理解できました。脅威も欲も有ったと思いますが相互理解と協調が不可欠、外交面での良い意味でのしたたかさがも足りないと感じた。2023/01/09
たま
53
昭和10年に満州に渡り敗戦までそこで過ごした澤地久枝さん(昭和5年生)の満州。個人的体験から出発し歴史的背景に言及する密度の濃い本である。渡りの大工だった父は満州で勤め口を見つける。五族共和の満州国といいながら国籍は日本。その植民地支配の構造。「有事の作為」「テロルの行方」の章は軍部の暴走と追随する世論を振り返り、「いのちの重さ」「文化の闇」は弟たちの病死や祖母の未識字(澤地さんの言葉)を通して貧困を、「餓えについて」「日本人難民」(開拓団への学徒動員)は戦争末期に強いられた苦難を抑えた筆致で伝える。2022/12/31
James Hayashi
22
満州で終戦を迎えた著者。テレビで語られた事を随筆のようなかたちで綴られている昭和。寝ても覚めても戦争。今の時代の人間は恵まれている。2020/08/10
浅香山三郎
14
澤地さんの書いたもので、本にまとまつたものを読むのは多分初めてである。親族の話、満州の暮らし、そして引き揚げといふ過酷な体験を綴つてをり、合はせて戦争の勃発と指導者層の無責任さや嘘を資料の読み込みにより対照させる。 私が知つてゐたのは、五味川純平さんの助手としての澤地さんだつたのだが、その仕事のベースにかういふ体験があつたとは。2017/07/23
Book Lover Mr.Garakuta
10
激動の時代を生きた証として残る体験談だ。2019/06/22