岩波現代文庫
釋迢空ノート

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  • サイズ 文庫判/ページ数 375p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006021061
  • NDC分類 911.162
  • Cコード C0195

内容説明

法名を筆名とした国文学・民俗学者の折口信夫(歌人・詩人の釋迢空)が秘していたもの、自ら葬り去ったこととは何か。虚と実、学問と創作、短詩型と自由詩の狭間に生きた折口の難問とは。日本の近代と格闘した巨人の謎多き生涯を、その歌と小説にしかと向き合い、史料の発掘と確かな精読で描き出す渾身の評伝。毎日出版文化賞受賞作。

目次

1 法名
2 歌集
3 恋
4 順礼
5 旅
6 母
7 大阪
8 父と子
9 死者
10 短歌の宿命

著者等紹介

富岡多惠子[トミオカタエコ]
詩人・小説家。1935年大阪市生まれ。詩集に『反礼』(H氏賞)『富岡多惠子詩集』。71年から小説に転じ、主な作品には『冥途の家族』(女流文学賞)がある。評論には『中勘助の恋』(読売文学賞)、近作に『西鶴の感情』(大佛次郎賞)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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chanvesa

21
町田康さんの講演を聴きに行った時、「富岡多恵子さんと対談した時に、『アンタ、中学生の時に折口信夫が担任だったらやられてたわよ』って言われた。」的な発言があって、興味を持った。釋迢空の同性愛とか家庭の問題、ましてや釋迢空という号の由来とか知らなかった。短歌には全くなじみがないけど、生き様には黒く静かな渦巻くエネルギーみたいなものを思わせる。「大阪が好きなんだけれど、その好きな内容が、説明できないから黙つてゐる」(220頁)は、大阪人気質と少し異なる独特さがあると思う。2017/11/26

かふ

18
大阪出身の詩人であった富岡多恵子が釈迢空の短歌から読み取ろとしたのは、釈迢空の「批評」性であり、それは短歌の韻律七五調が生み出す日本の叙情ということである。同じ万葉調の短歌を目指しながら斎藤茂吉との分岐点は、それを当たり前のように受け入れるのか、そこに批評性を持って立ち向かのかという短歌の姿勢にあった。すでに釈迢空は五七調の韻律である短歌は滅びつつある定形だと見ていた。それを「ごーすと」性と呼ぶのだが、短歌は前近代の幽霊を呼び覚ます呪術という思考があったものと思われる。それは「明かしえぬ共同体」なのだ。2022/11/22

gorgeanalogue

4
再読。時系列は行ったり来たりだし、因果関係がすっきりわかる書き方にもなっていないので、いまだ読み落としているところは多いが、藤無染のなぞ解きを中心にして、何しろ面白い。 著者の読み解きで見えてくるような気がするのは、釈迢空の歌のなんとも言えぬ粘った(他者へわからせることへの諦念の固定化)された「抒情」で、ところが逆説的に、というのか、迢空の歌でいいのは、叙景が程よく配分されている「素直な美しい」歌なのである。 またこの一方で柴舟、迢空が直面した近代短歌の困難は書き尽くされているとは言えない。2018/05/08

せっぱ

2
折口信夫の筆名・釋迢空。その歌や小説を細かくかつ大胆に読み解き,語られなかった生い立ちや恋愛を浮かび上がらせる。小説「口ぶえ」について詳細が引用されるのでネタばれ注意。大阪の町中に育った折口が自然と身に付けた表現方法についての考察が面白い。読後,歌集の作品を読むと印象がかなり変わった。2014/11/05

さいとうさと

1
「釈迢空」という仏教のにおいのする名前はどこからきたのか、という疑問から、藤無染との関係の推測へと遡っていく。母に対する屈折した、それこそ数回転半して元の位置から随分それたところに着地するような歌の紹介も興味深かった。最終章の「短歌の宿命」については私がそういうことについて考えたことがないせいかうまく読めなかったので、しばらく置いて再読したいです。2018/10/07

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