出版社内容情報
リンチ、脅迫、放火、爆破。アメリカ南部社会を覆う、人種差別の凄まじい暴力。われわれ黒人はもう待てないのだ。人びとを直接行動による社会変革へと導いたキング牧師。武器をとらず非暴力で闘い抜いた苛烈な生涯をえがく。
内容説明
リンチ、脅迫、放火、爆破。アメリカ南部社会を覆う、人種差別の凄まじい暴力。われわれ黒人はもう待てないのだ。人びとを非暴力による社会変革へと導いたキング牧師(一九二九‐一九六八)。栄光の前半生だけでなく、貧困のないアメリカを夢見た彼の後半生を忘れてはならない。武器をとらずに闘い抜いた、苛烈な生涯をえがく。
目次
第1章 非暴力に出会う
第2章 非暴力を学ぶ
第3章 「創造的少数派」の戦術
第4章 非暴力に対する挑戦
第5章 最後の一人になっても
第6章 「実現せざる夢」に生きる
著者等紹介
黒〓真[クロサキマコト]
1971年生まれ。2003年筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了、同年より神田外語大学外国語学部英米語学科講師を経て、神田外語大学外国語学部英米語学科教授。専攻は米国史、米国黒人史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さゆ@俳句集販売中
156
非暴力闘争をする人たちに共通することのひとつに、相手の良心への訴えがある。相手が1人ではその考えを変えることができなくても、集団であれば誰かしらは理解を示してくれるだろうという戦略に思える。そこで、メディアを使い幅広く宣伝し、少しずつイデオロギーを変革していこうというわけだ。それは、絶えず相手を信じ、自己犠牲を罪と捉えず使命とするほどの心がなければできないことである。2024/01/15
藤月はな(灯れ松明の火)
97
暗殺された公民権運動家としてしか知らなかったマルティン・ルーサー・キング。だけど、彼の考えはもっと奥深いものだった。マルコムXやブラック・パワー派とも対談していた懐の深さ。そして暗殺までの数年は中産階級だけでなく、貧困層にいる黒人にも真の自由と平等を叶えようとしていた彼。しかし、政治や人々の意識にまでも波及させようとさせた非暴力と真の平等の思想と活動が、政治的理由によって隣人への愛へと狭められてしまったという事実がとても切ない。巻末に参考文献だけでなく、音源資料や映画なども紹介されているのが有難いです。2018/06/14
まーくん
42
暗殺から50年。非暴力で人種差別に立ち向かったキング牧師の苦闘を辿る。公民権運動など、報道でおぼろげながら記憶にあるが、当時の南部社会を覆っていた凄まじい暴力に改めて戦慄する。60年代のアメリカにおいて、黒人の選挙権も識字テストなどの姑息な手段で制限されていたとは・・。公民権活動家としてだけではなく、後半生(といっても僅か39年の生涯)の貧困根絶への闘いをもっと評価するべきと著者は述べる。80年代、一人旅したアトランタ、まだまだ差別の空気が色濃く残っていた。"I Have a Dream."未だ成らず。2018/06/22
樋口佳之
38
キングの指導した非暴力直接行動は、対決的状況を生み出して事態を動かす、極めて戦闘的な行動である。/新たな知見のいくつかを取り入れている。「三つ組みの悪」に対するキングの認識はすでに大学院時代にできあがっていたこと、晩年のキングにむしろ焦点を当てる必要があること、公民権運動における非暴力を自衛との関係で捉え直すこと、公民権運動とブラック・パワー運動の連続性に着目すること、両者の運動を冷戦構造に位置づけて理解すること2018/10/18
skunk_c
29
キング牧師暗殺後50年にして著されたコンパクトで示唆に富んだ評伝。ワシントン大行進に象徴される、それこそ有名な「非暴力」で南部の人種差別と戦い、法的平等への道を勝ち取ったという、アメリカの「公式の評価」よりも、その後キング自身が悪戦苦闘した、人種的不正義、貧困、戦争の「三つ組の悪」の解消こそが、キングの目指したものだとする視点は重要。また、非暴力が如何に実践され、戦いの手段として機能したか、そして「自衛」という困難な矛盾をはらんでいたかが丁寧に語られる。シリアスな問題を穏やかな口調で語る文体も魅力的だ。2018/04/29