出版社内容情報
克明な心理描写をまじえて戦争と人間の真実に分け入る小説作品は、戦争のリアルを伝える大切な語り部だ。物語の中に封じ込められた、戦下の人びとの細かな感覚と手ざわり。想像力で戦争に抗うためのブックガイド。
内容説明
克明な心理描写をまじえて戦争と人間の真実に分け入る小説作品は、戦争のリアルを伝える大切な語り部だ。物語のなかに封じ込められた、戦時下を生きる人びとの細やかな感覚、日々の葛藤、苦しみ、そして悲しみ。記憶の風化とともに失われていく、かつての時代の手がかりを求めて、戦争の文学を再読する。
目次
第1章 戦時風景
第2章 女性たちの戦争
第3章 植民地に起こった戦争は―
第4章 周縁に生きる
第5章 戦争責任を問う
終章 いまここにある戦争
著者等紹介
中川成美[ナカガワシゲミ]
1951年東京生まれ。1975年立教大学文学部卒業、1984年立教大学大学院文学研究科博士課程修了、1996年から立命館大学文学部教授、2002年スタンフォード大学客員教授、2011年パリ第7大学招聘教授などを経て、立命館大学特任教授。専攻、日本近現代文学・文化、比較文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
82
父親に「お前、ダルトン・トランボを知っているか?」と尋ねられ、「知っている。『ローマの休日』や『ジョニーは戦争に行った』を書いた人だけど」と答えると「この面白い本にトランボの事が書かれていてよ~」とお勧めされた本。戦争を描いた作品だけではなく、海外の作品、やがては戦争に行き着くだろう社会問題を取り上げた作品、古処誠二作品や『服従』、『虐殺器官』までの最近の作品までも幅広く、紹介されています。後、父は「この作者は書き方から女性だと思うのだが、どうなんだろう・・・」と首を捻っていました。2017/11/16
ころりんぱ
50
終戦から70年余り、日本は戦争をすることなく今に至っている。一方世界では日々どこかで戦争が起こり傷ついている人がいる。身近に何かが起きるまでは他人事。だけどいざ起こったら否応なく巻き込まれ例外なく当事者になる。多分当時の日本人も、まさか、こんなはずでは、そんな馬鹿な、仕方ない、と思いながら戦時を過ごしたんじゃないかと思う。この本で紹介されている70作品は幅広くて、解説もわかりやすく著者のメッセージが強く反映されている。読みたい本が増えた。2018/10/06
Nobuko Hashimoto
24
京都新聞に連載されていた書評をベースに編まれた文学紹介の新書。一篇ずつがそれぞれ濃くて、いずれも読まなくては、読みたい、と思わせるものばかり。特に気になったものを自分用の備忘録としてブログりました。https://chekosan.exblog.jp/33611521/ ジョン・オカダ『ノーノー・ボーイ』高橋たか子『誘惑者』宮田文子『ゲシュタポ』リリアン・ヘルマン『眠れない時代』大田洋子『ほたる』松本清張『遠い接近』児玉隆也『一銭五厘たちの横丁』パトリック・モディアノ『1941年。パリの尋ね人』 2023/12/27
浅香山三郎
20
本書のまえがき「文学は戦争とともに歩んだ」には、「直線的な戦争批判」だけではなく、幅広い文学のジャンルを対象として、「文学と戦争の関係を想像力を拠りどころとして再構築」する試みが表明されてゐる。戦争自体や戦時を扱ふ作品以外に、植民地といふ制度や、〈帝国〉としての日本の社会経済構造、そして戦後と戦争責任迄、戦争にかかはる問題を取り上げることはまさに近代といふシステムそのものを問ふことだといふのがわかる。終章「いまここにある戦争」は、『1984年』から『半減期を祝って』に至るが、為政者が自在に振る舞う↓2018/03/27
Cinejazz
15
戦争体験者が年々減少し、戦争の忌わしい記憶が風化されつつあるなかで、「忘れられた物語(記憶)―戦争の文学再読」として新聞に連載された70冊の小説の読書案内。日本の無条件降伏後にシベリア抑留で強制労働を強いられ、生還できた父の体験談は今も耳にこびりついて離れないが、本書70冊のうち既読本は1/10冊のみ。 結城昌治の『軍旗はためく下に』、T.オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』、S.アレクシェ-ヴィッチの『戦争は女の顔をしていない』に読欲をそそられる。2021/08/10