出版社内容情報
「デュアルユース」の名の下に進む科学の軍事化。戦争への反省を忘れた科学者たちの社会的責任を問う。
内容説明
軍事研究との訣別を誓ったはずの日本で、軍学共同が急速に進んでいる。悲惨な結果をもたらした歴史への反省を忘れ、科学者はいったい何を考えているのか。「科学は両義的」「戦争は発明の母」「国への協力は世界標準」などの「論理」を批判。科学者は戦争への応用に毅然として反対し、真の社会的責任を果たすべきである。
目次
第1章 科学者はなぜ軍事研究に従うのか(科学者の愛国;日本の科学者の戦争協力;ナチス・ドイツの物理学者たち)
第2章 科学者の戦争放棄のその後(戦後の平和路線とその躓き;軍と学の接近;防衛省の軍学共同戦略;科学技術基本計画)
第3章 デュアルユース問題を考える(デュアルユースとは;ゆらぐ大学の研究ガイドライン;テロとデュアルユース問題;日本の科学者の意識)
第4章 軍事化した科学の末路(科学者は単純である;軍事研究の「魅力」;軍事研究の空しさ;軍事研究は科学を発展させるのか?)
著者等紹介
池内了[イケウチサトル]
1944年兵庫県生まれ。総合研究大学院大学名誉教授、名古屋大学名誉教授。専攻は宇宙論・銀河物理学、科学・技術・社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
18
「選択と集中」政策や大学交付金の削減は、多くの研究者を貧困状態に追いやり、軍事研究に手を出さざるを得なくさせている。そうであっても研究者としては表立っては軍事研究に踏み込みにくい。そこで自分の行動を正当化するための方便として使われるのが「デュアルユース」だ。基礎研究の場合、民生研究か軍事研究か判別しにくい。そういう言い訳として使われる。確かに基礎段階では判別はつかない。だが研究資金がどこから出ているのかは判別がつく。学術機関からならば民生利用、軍からならば軍事利用。後者であるなら拒否しなければならない。 2016/11/27
skunk_c
15
大学で軍事研究はやらないとしてきた戦後日本の科学研究がどのような圧力を受けているかを詳述。軍事研究反対の立場から研究の機密化が招く問題を指摘する。こうした本書の立場には賛成だし、著者の考えにも同感なのだが、読んでいて違和感を感じた。日本は確かに平和憲法の下「戦争の放棄」を掲げているが、一方で米軍に基地を提供し、世界有数の軍事力である自衛隊を持つ矛盾。でも科学者はこの現実から自動的に距離を置ける存在としているような印象を受けた。平和主義が正しいという理念が先行し、現実の矛盾に向き合っていない気がするのだ。2017/03/04
ジコボー
11
「戦争は発明の母」なのか? 本質は、必要に駆られての発明「必要が発明の母」。 軍事化を受け入れる大きな論理は「悪法も法である」という形式論理と「科学の発展のため」というすり替えの論理。 軍事共同が急速に進んでいる現在の日本において、軍事と技術開発について書かれた本書。 科学者の人間性について描かれている点が印象に残りました。人間性は知識の偏りもあり多少ズレており、交渉に弱く、律儀で恩義に熱い。オーバーフィッティングな思考で権威に弱い。なるほどなと感じました。2020/02/03
おっくー
9
衝動買いした本。科学者視点の本であり、戦争との関わり方について書かれた私的感情を強く感じる本。日本が軍事的な研究を行わないことが稀有で賞賛しているが、他の国については科学者との歴史を学ぶに止めるのみであり、結論は海外は対岸の火事で、日本での軍事研究はありえない。科学の進歩は戦争のお陰ではない。潤沢な資金、統合的な科学者の連携となっている。とのこと。読んでて、作者を疑う発言が多かった。2017/07/03
バカボンのパパ
8
★★☆☆☆タイトルに興味を持ち、拝読。「デュアルユース」というキーワードが頻繁に使われてましたね。軍事にも民生にも転用可能な最新テクノロジーである。嫌ですね。科学は平和目的、福祉目的で使われて欲しいものです。とんちんかんですか?拝読中、嫌悪感を感じていました。2016/09/22