感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
11
森鴎外の翻訳作品は、単なる翻訳ではなく、作品の大胆な省略、訳語の言ひかへを含む「文化の翻訳」だつたとする。著者はアンデルセンの『即興詩人』、イプセンの『人形の家』等、原作の本来の筋と鴎外の訳出の差異を検討し、原作の文化的背景を日本の文化的文脈に移植する苦心を明らかにする。その作業過程は、鴎外なりの新しい物語の創作であり、又別の彼自身の作品の中で、イプセンを批評してもゐる。漱石とは別の形での、日本の作家による近代の消化過程をこれらの翻訳作品は示してをり、その関係は歴史物についても言へると言ふ。2017/11/13
スズツキ
6
文豪・森鴎外を翻訳家としてみた場合から見られるその思想を分析して、その問題点を浮き彫りにすることに成功している。意図的な原作改変や誤読などが点在する箇所の指摘は一般的にあまり見られない情報だから、貴重ではないかと。反面、当時の鴎外のみが到達することのできた西欧文化の受容というところも見逃せない。2017/03/29
katashin86
1
没後100年にいよいよ鷗外への関心が増しているが、アンデルセン「即興詩人」やイプセン戯曲の訳業に注目したこの本の視点は興味深い。「翻訳者」としての鷗外を知ることができた。2022/04/17
Kate3
1
森鴎外の作品では『舞姫』『高瀬舟』の世界しか知らないので、彼が行った翻訳に関するエッセイが気になり読んでみた。読み応えはあり、今後、森鴎外の作品を選ぶ際には、論評をもしかしたら参考にするかもしれない。2020/02/09
かしこ
1
鴎外がアンデルセン、イプセンの著書を自分の考えに沿うように翻訳していることが面白かった。原作を下敷きにした一種の創作だろう。2019/04/17