出版社内容情報
陸羯南，平塚らいてうから斎藤茂男まで，日本の近現代にあって，権力や時代の風潮にペンで戦いを挑んだ人々10人を取り上げる．彼らの生き方は「反骨」を忘れかけた現代のジャーナリズムに鋭い問いをつきつけている．
内容説明
独立不羈の言論人・陸羯南、底辺からの告発者・横山源之助、凛然と発言する「新しい女」平塚らいてう、「生涯一記者」を貫いた斎藤茂男…日本の近現代にあって、権力や時代の風調にペンで戦いを挑んだ人々から、十人を取り上げる。時代に迎合せぬ彼らの生き方は、「反骨」を忘れかけた現代のジャーナリズムに鋭く問いをつきつけている。
目次
１ 独立不羈の覚悟―陸羯南
２ ルポルタージュの先覚―横山源之助
３ 元始、女性は太陽であった―平塚らいてう
４ 自由への疾走―大杉栄
５ 過激にして愛嬌あり―宮武外骨
６ 関東防空大演習を嗤う―桐生悠々
７ 国家よりはるか遠くに―尾崎秀実
８ 不屈の“弱者”―鈴木東民
９ 北の地にたいまつを掲げて―むのたけじ
１０ 生涯一記者―斎藤茂男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
33
10人のジャーナリストの生き様をつづった新書。むのたけじや斎藤茂男は業績を含めてよく知っているが、陸羯南や宮武外骨などは名前だけだったので勉強になった。最も印象に残ったのは桐生悠々。戦時中の日本帝国軍に一貫して物申し続けた姿勢はジャーナリストの鏡です。己が書く記事が果たして歴史に耐えうるのか、日々判断する必要がある。政府のつゆ払いに成り下がり、個人の存在を脅かすものになっていないか、不断の自己点検が必要だ。むのたけじさんのこの言葉を現場の記者たちに聞かせたいですね。2018/06/06
かふ
25
大新聞社の記者が黒川元検事長の賭け麻雀をやっていたことから積読で気になっていた新書を読み始めたのだが最初のページに「「反骨のジャーナリスト」と「迎合のジャーナリスト」があるわけではない。「そもそも反骨の精神が希薄なジャーナリストを、ジャーナリストと呼べるのかどうか。」の言葉。「反骨でないジャーナリストとは、権力に抵抗しないジャーナリスト、ということになる。」今の時代を言い表している。あとがきを読むとNHKのETVの「人間講座」での講義だったということだが絶版になっていたのが物語っている。2020/05/31
ロビン
19
陸羯南、宮武外骨、平塚らいてう、大杉栄、桐生悠々、むのたけじ、斎藤茂男など１０人の「反骨」の言論人を紹介した本。地元である富山出身のルポライター横山源之助も含まれているが、不勉強で横山のことは知らなかったし、ゾルゲ事件に関係した尾崎秀実、記者や政治家として常に権力と闘った鈴木東民なども今回初めてその存在を知った。歴史家でもあったロマン・ロランは「敗者のほうが気高いということがあるものです」と書いたが、権力の前に幾度もペンを折られ敗北しながらも言論の力を信じて闘い続けた彼らは、私にとってはヒーローである。2021/09/09
壱萬弐仟縁
17
ネットの時代に、紙の新聞や、テレビを持たない若者も増えてきた。新聞やテレビがネットで情報調達される時代に、報道の内実も問われる。陸羯南、横山源之助、平塚らいてう、宮武外骨、桐生悠々らの話がある。横山源之助『日本の下層社会』は産業社会学概論で学んだ覚えがある。貧民状態、職人世界、手工業の現状、機械工場の労働者、小作人の生活事情が報告される（４０頁）。宮武外骨の警察官の腐敗（１０２頁）。僕は警察には酷い目に遭っているので痛快。いいな、炙っても文字は出ません、と。読者に想像してほしい、という精神。悠々は、憂鬱？2013/08/11
更紗蝦
14
国家権力や世間からの非難や圧力に対して言論で立ち向かった人たちを紹介している本です。タイトルは『反骨のジャーナリスト』ですが、作家や思想家というイメージの方が一般的な人物も含まれています。人間の尊厳のために戦った人たちの人生の軌跡を追っていくと、いかに日本という国が明治時代から一向に人権意識が育っていないかがよく分かります。この本で紹介されている人たちの社会的な周知度の低さ（学校の授業で習う可能性があるのは平塚らいてうと大杉栄くらい？）は、日本が過去から何も学ばない国であることの証明になっています。2016/06/24
