出版社内容情報
「不況は“お湿り”と喝破したシュンペーター.ケインズと並び二○世紀を代表するこの経済学者は,ヨーロッパ,アメリカでの生涯を通して,資本主義の本質を問い続けた.三度の結婚,大蔵大臣としての挫折など起伏に富んだ軌跡を追いながら,今こそ光彩を放つそのイノヴェーション論,景気循環論,企業者像,さらには社会主義観を描く.
内容説明
「不況は“お湿り”」と喝破したシュンペーター。ケインズと並び20世紀を代表するこの経済学者は、ヨーロッパ、アメリカでの生涯を通して、資本主義の本質を問い続けた。三度の結婚、大蔵大臣としての挫折など起状に富んだ軌跡を追いながら、今こそ光彩を放つそのイノヴェーション論、景気循環論、企業者像、さらには社会主義観を描く。
目次
序章 シュンペーターとケインズ
1 若き彗星
2 政治の季節
3 偉大な教師の時代
4 シュンペーターの思想と理論
5 シュンペーターと現代
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
61
ケインズもシュンペーターも熟知されている伊東光晴先生と根井先生の共著であるシュンペーターに関する人物論とその著作などについての論評されたものです。ケインズに対して書斎の人として研究者一途の理論家であったと思います。経済発展論や景気循環論についても書かれて、新書版としてはこれ以上ないシュンペーター論だと思います。2015/08/12
Miyoshi Hirotaka
26
経済学的には停止中の車も100kmで走行中の車も同じ。生産、交換、消費が同じ規模で循環していると見做すからだ。一方で、急加速、急ブレーキ中の動的状態がイノベーション。定められた状態に充てられていたものを新しい目的に役立つよう転用することを意味する。資本主義らしさとは、この新結合が絶えず起きること。一方、これは少数の集団にできることで、卓越した知力と精力を要する。この遂行が経営者の使命で、非連族的な発展につながる。世紀末のウィーンでは多彩な文化・芸術が飛躍的に生まれ、イノベーション理論形成の母体になった。2018/03/15
肉尊
14
シュンペーターは不況を新結合によって創造された新事態に対する正常な適応過程であり、それを「お湿り」と表現した。『経済学原理』で知られるマーシャルが「自然は飛躍せず」と述べ、経済発展を連続的かつ漸進的なものと捉えたのに対し、シュンペーターは理論と政策を峻別した上でベルクソン的な飛躍があったと分析している。その背景には、亡き妻の日記を5年間も繰り返し書写し続けた孤高と世紀末ウイーンの「華麗なる没落」(シュテファン・ゲオルゲ)が垣間見られる。日々の知的成果を点数化した彼の理論は、ケインズに取って代わられた。2020/12/28
Wataru Oya
10
再読。ケインズと並び20世紀を代表する経済学者シュンペーター。イノベーションを唱えた学者で有名だが、ケインズに比べると地味な印象は拭えない。同じ1883年に生まれた二人だが考え方は異なっていた。ケインズは壮大な経済学の体系を作ることができる幸福な時代はすでに過ぎ去っていたと考えていた。しかし、シュンペーターが求めたのは壮大な経済学の体系だった。ワルラスを「最高の経済学者」と評価しながら、どうして均衡理論や計量経済学的モデル分析を継承しなかったのか疑問。2015/01/08
isao_key
8
ケインズと並び20世紀を代表する経済学者であるシュンペーター。イノベーションを唱えた学者というのは聞いていたが、ケインズに比べると地味な印象はぬぐえない。以前同著者による岩波新書『ケインズ』を読んだときほどは分かりやすくなかった。特に4章の思想と理論は腰を据えてじっくり取り組まないとさっぱり分からない。同じ1883年に生まれた二人だが、考え方は異なっていた。ケインズは壮大な経済学の体系を作ることができる幸福な時代はすでに過ぎ去っていたと考えていた。だがシュンペーターが求めたのは壮大な経済学の体系だった。2013/12/11