出版社内容情報
かつて靖国神社は,国民を「天皇の軍隊」に結びつけるきずなの役割を果してきた.今日では一宗教法人となっているが,近年,現職首相の参拝が慣行化し,また国家護持を求める動きも執拗にくり返されている.本書は,靖国信仰がどのようにつくられ,戦争への国民動員にいかに利用されたかをたどって,今日の靖国問題の意味を明らかにする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
林 一歩
28
直接関係ないですが、靖国参拝と昭和天皇の戦争責任に関しては、妻と意見が合いません。そんな話題が食卓で交わされる家庭は何かやだ(苦笑)2013/08/16
nobody
15
所詮心の問題ではないか。否、靖国問題には利権がある。合祀者遺族には年金が支給される。従って日本遺族会が鍵になってくるのだが追究はタブー化している。新書的配慮をしない書き手は、威嚇して何かを隠そうとしているのである。大江は何を誤魔化そうとしたか。靖国の国家神道体系における特異性、明治政府が当初の理想として掲げた政体の制度としての祭政一致路線のまもなくの破綻(路線の説明スルー、反対勢力も不明)、人霊の神霊転化の靖国独自性(いや日本古来的ではないか)、神社本庁との関係。「惟神の道」も「報本反始の誠」も解説なし。2020/03/20
CTC
10
84年岩波新書。1979年は靖国神社の周辺が騒がしくなる節目の年。A級戦犯合祀は78年の事だが、公表は79年4月だ。そして所謂“靖国問題”と云われる政教分離に関する訴訟の嚆矢=岩手靖国違憲訴訟がこの年である。 陸軍航空士官学校出の史家が、国家神道の成立やそれに伴う社格制度導入、そしてその序列の中でもひときわ特異な靖国の存在を語る本書。実は…岩手訴訟の原告証人として、著者が裁判所に提出した「意見書」が、このテキストの元になったと知れば驚くしかない。まぁ確かにね、今となっては玉串料の公費支出は問題だろうけど。2019/10/11
masawo
7
明治維新を皮切りに、政府が国家神道を推進してきた経緯から靖国神社信仰に至るまでの道筋を解説する。戦後、国家神道は消滅したにもかかわらず、戦死者の霊を家族から取り上げて英霊として祀っている神社に、未だに参拝を続ける政治家がいるのは理解に苦しむ。「政教分離」がホットな話題の現在にオススメの一冊。2022/07/22
Takao
7
1984年3月21日発行(2005年6月15日、第23刷)。本書を求めたのがたぶん16年ほど前、その時点で既に23刷と版を重ねている。あとがきによると、本書は、岩手靖國訴訟、箕面忠魂碑訴訟での著者の意見書が元になっている。内容がとても難しく、難解な引用文も多々あったが、それでも「なるほど」と教えられる点が多く、著者の言わんとしたこと(肉親を戦争で奪われるだけでなく、その魂までも国家が奪ってしまうことの理不尽さ)はよくわかった。本書を読まずして「靖國」を語ってきたことが恥ずかしい。2016/10/09