出版社内容情報
日本の中世は一揆の時代といわれる.この時期,あらゆる階層や地域に,共通の目的達成の手段として一揆が結ばれた.これら一揆とよばれる特異な集団は,どのような論理で結ばれ,支えられていたのか.一揆内部の作法や参加者の意識に光を当て,日本社会を深層から規定する集団形成のあり方を明らかにする.
内容説明
日本の中世は一揆の時代といわれる。この時期、あらゆる階層や地域に、共通の目的達成の手段として一揆が結ばれた。これら一揆とよばれる特異な集団は、どのような論理で結ばれ、支えられていたのか。一揆内部の作法や参加者の意識に光を当て、日本社会を深層から規定する集団形成のあり方を明らかにする。
目次
1 一揆とは何か
2 共同の世界
3 変身と変相
4 変革の思想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
17
目にへばりついていたウロコを気持ちよく剥ぎ落してくれる一冊。語感から蜂起とか決起とかと同列と感じていたが、「一揆」とは本来「道を一つにする者たち」の意味、だからこの本の事例も、鎌倉の評定衆や神護寺の会議、松浦党などの郷士集団から始まる。すごいな、と思うのが、一揆の参加者は現実の身分差や貧富に関わらず、平等に意見を述べ、一票も平等に扱われるということ。制度的なタテの秩序に優越する、ヨコのつながり。忘れられた日本人での対馬の村の会合や、今のPTAの寄合はきっと、この伝統に基づく。日本は、ヨコ社会でもあるのだ。2013/07/15
kenitirokikuti
9
図書館にて。1982年刊行の岩波新書黄帯。若尾政希『百姓一揆』(岩波新書、2018)から本書の背景を写す。中公の日本の歴史15大名と百姓の刊行は1966年であるが、67〜73年頃に歴史学会で『カムイ伝』的な人民闘争史観が流行(『日本民衆の歴史』74〜76)。その後問題感覚は反封建から反戦後へと変わる。81年には共同研究による『一揆』全5巻が刊行。勝俣『一揆』(82)は81年『一揆』全5巻共同研究の成果のひとつ。99〜00年には『民衆運動史-近世から近代へ』全5巻刊行。2023/01/16
おMP夫人
9
私には少し難しい本でした。ひとまず今回は、一揆そのものは元は公正・平等な連帯を求める一種の社会契約で、時代が下ると改善要求のデモやストライキを行う労働組合のようなものになり、末法思想の影響や農民の社会的立場の変化により手段が打ちこわしなどの武力行使へ変遷していった。という理解です。後半部分、一揆の奥に見える観念や思想を民俗学的な見地を交えて考察している部分は何度も感心させられ、傘連判状に見える平等意識、蓑笠姿の変身観念、篠(ささ)を引くという行為が持つ意味など、このあたりのくだりに一番興味を持ちました。2013/02/14
chanvesa
8
一揆は命を張って参加したに違いない。そしてその背景にはまだ生きていた神々の力を借りていた。だからそこに社会変革のヴィジョンがなくても強さがあった。後半述べられる世直しの思想では、首をもたげる近代に対して、渡辺京二さんが指摘されるような北一輝や西郷がイメージしていたような変革後のヴィジョンが含まれていることに、成る程と思った。反原発や秘密保護法案反対のデモ、やはり一味神水的な魔法の共同観念ではなく、Facebookのようなネットワークであることが、残念ながら社会変革にまで至らないとすら思ってしまう。2013/12/28
かもすぱ
6
平安後期から明治初期まで発生した、一揆についての本。一揆とは本来特別な手続き(神への誓約)を経て結成された特殊なメンバーからなる「非日常な」集団のことだった。 非日常な存在のため、通常の権力に対抗することができた。権力(領主など)に対抗するための集団訴訟の役割→徳政一揆・焼き打ち→世直し・打ちこわしの流れ。 この本では特に一揆の「非日常性」に注目されていて、そこから読み解く当時の価値観が面白かった。2016/01/06