出版社内容情報
歴史家としてのマキアヴェッリの代表作.このフィレンツェ都市国家の建設からロレンツオ・デ・メディチの死までの政治史の正確な叙述は,近代史学の発達に大きな寄与をなした.貴族,市民,平民の抗争を生きいきと描きつつ,法王制がイタリアの政治統一をいかに阻害したかを鋭く指摘,市民による国家統一を強調している.
内容説明
『君主論』で名高いマキァヴェッリ(1469‐1527)が晩年に書いた歴史書。古代ローマ時代のフィレンツェの起源から1492年の大ロレンツォ・デ・メディチの死までが扱われる。各種年代記や歴史叙述等の史料を駆使し、ときにそれらに大胆かつ自由奔放な創作の手を加えて、彼一流の精彩に富む歴史像を作り上げた。新訳。
目次
第1巻 イタリア史概観。ローマ帝国の滅亡から一四三四年まで
第2巻 フィレンツェの起源からアテネ公の追放後に平民政府が復興した一三四三年まで
第3巻 ピーサ獲得にいたるまでのフィレンツェの内部抗争および戦争、一三四三‐一四一四年
第4巻 トスカーナにおけるフィレンツェの領土拡大からコジモ・デ・メディチの流刑地よりの帰還まで、一四一四‐一四三四年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
積読0415
5
本書冒頭の「私の記述は、この何もしない支配者や卑怯な軍隊でいっぱいになるであろう。」この一文にすべて集約されていると思う。何故だか分からないが、我々は「共和国」なるものに一定の幻想のようなものを描いている節がある。それを完膚なきまでに叩き潰してくれる本である。ヤクザ映画を延々見せられるような気分になる。「派閥」と「抗争」というものがさっぱり頭に入ってこない自分には、なかなかしんどかった。 2021/09/19
あくび虫
5
歴史を知りたいのならば、オススメはしません。マキャベリかフィレンツェを好きな人が読むべきです。素人がこの本から詳細な歴史を学ぶことは不可能かと。とにかく、フィレンツェが内部分裂常習犯なことはよくわかります。――個人の問題か時代の問題かは知りませんが、すごく自由な歴史書です。歴史書というか、思想書です。その意味では面白い本。頻繁に創作が入ってくるし、意見・感想、なんでもあり。歴史書に無機的なイメージを持つ身としては、なかなかの衝撃作。――それと、マキャベリって随分熱い人だな、と感じました。2017/02/08
壱萬弐仟縁
3
1520‐25年初出。いわゆる高校世界史で出てくる教皇や皇帝も〇世が違うと別人になってしまい、そうした戸惑いはある。良き法も悪しき慣習で(グレシャムの法則で悪貨は良貨を駆逐する式に)、市民に見られる貪欲、恥ずべき虚栄への渇望が生れ、憎悪、敵意、対立、党派が派生(280頁)。第4巻第16章には、ジョヴァンニ・デ・メディチは1429年に、「わたしが心から満足して死ねるのは、(略)わたしが誰も苦しめず、(略)できる限りすべての人を援助したことを思い出すから」(414頁)とのこと。2013/04/05
Masa03
2
ある意味エントリーシート(笑) 君主論のマキアベッリが書いたフィレンツェの歴史、となればなかなか面白いかと思って読んでみた。借りたものの、これ、結構露骨なヨイショ本。まぁ、君主論だってフィレンツェでの政争に敗れた無職のマキアベッリが就職のために時のメディチ家当主(だったか?)に向かって書いた本なわけだけれど、このフィレンツェ史に至ってはメディチをヨイショして職にありつこうとする魂胆が透けて見える、、、と思うのはちと穿ち過ぎか? まぁ、現代で言えばエントリーシートの類。下巻をどう書くか。ある意味楽しみだ笑2018/12/12
鏡裕之
2
ローマ帝国崩壊後、オドアケルなどの異民族が侵入してきてどのようになったのか、どんな経緯で教皇が強い力を持ち、世俗的な王のように振る舞うようになったのかが理解できるのが、興味深い。それにしても、ジョヴァンニ・ド・メディチは高潔だ。俗悪なフィレンツェ史に輝く有徳の光。2014/01/17