出版社内容情報
激しい憂愁と懐疑に堪えたキェルケゴールは,主体的な存在を問題とした最初の思想家であった.ここに今日に至る実存哲学の祖としての思想史的意義がある.本書はこのような彼の自己自身との厳しい総決算であり,質的飛躍による真実絶対への生を創造する過程を,深い体験の表現において展開した内容豊かなもの.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
127
不安は罪の意識や内面性への欠如から引き起こすが、武装手段に罪であることを信じる勇気と不安と絶交する勇気と信仰がある。しかし、不安とは、まだ不確定で殆どは現実に起こらない未来への独りよがりの勝手な恐怖心であることを認知すれば、今この瞬間だけに集中でき、連続性を持って未来への不安も気付けば突破しているものである。2019/07/28
Happy Like a Honeybee
11
死に至る病以前に書かれた一冊。 不安とは恐れているものに、心惹かれること。反感的な共感であると。 無垢な人間の不安、贖罪への示唆。キリストやユダヤ教における不安の諸形態。性欲や天才との関係性。 ハイデッガーやフロイトなど精神分析へ影響を与えたようだ。 宗教などをしっかり学習してから再読すると、理解が深まるかもしれない。2018/02/06
masawo
9
「不安」とは何なのか、様々な角度から定義した上で「不安」との関わり方を模索する、というような内容だが、とにかく回りくどくて読み続けるのがしんどかった。教義学やヘーゲルを理解していないからかもしれないが『死に至る病』に挑戦する勇気は失せつつある。2020/03/08
きゃんたか
7
不安とは無知であり、無垢であり、羞恥心であり、自覚されていない罪である。各個人が罪の自覚によって克服しなければならない中間規定である。かくして私の「純粋無垢」はものの見事に粉砕された。2014/10/13
ポルターガイスト
5
正直ほとんど理解できていないと思う。もともとキルケゴールが苦手な上にキリスト教的な要素が『死に至る病』などより前面に出ていて,訳文も硬い。おかげでクソ時間消費した。おれの頭ではこれが限界。キルケゴールの本はなんかどれも本題に入るまでの前置きが長い。で,読むといつも「これなら結局アウグスティヌスのほうが…」と思ってしまう。ただ,神の前に立つ単独者という感覚こそがこの「私」という実存を裏打ちしているという感じは少しわかった。ちなみにおれは現実は重く可能性が軽いとは思わないが,軽い現実があるだけだと思います。2020/09/20