岩波文庫<br> 弁論家について〈上〉

岩波文庫
弁論家について〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 300p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003361146
  • NDC分類 131.8
  • Cコード C0110

内容説明

ローマ最高の弁論家キケロー(前106‐前43)が、既存の弁論術を批判・検討し、実践弁論の復権、哲学と弁論の再結合を説く。“人間的教養”の勧めである本書は、ヨーロッパ的精神の一大指導理念たる〈ヒューマニズム〉の形成にも大きな影響を与えた。自らの理念に忠実に生き、それに殉じた一つの偉大な精神の金字塔。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ロビン

23
古代ローマの名弁論家キケローが、コッタという人物から伝え聞いた二人の雄弁家クラッススとアントーニウスの弁論についての談論を録して弟に書き送ったという体をとる対話篇(実際はキケローの創作と言われる)。前半は弁論家に求められる知識はいかなるものかということや、理想の弁論家とはということなどが語られ、後半はいかに弁論家が聴衆の心を自分の意図する方向に動かすのかということなどが語られる。『群集心理』などでも指摘されていたが、人間は理性より情動に従って判断を下すことが多いという言葉はおそらく永遠の真理であろう。2021/02/05

加納恭史

15
老子は難しかったなあ。文学的な説明や説話があったらなあ。キケローのストア派の説明も多分難しいのだろうと思っていたが、以外にこの本はキケローと親しかった人たちとの対話で、最初は読み易いのでホットする。弁論家について、美辞麗句だけで問題は済まない。哲学や学術の深い洞察がなければ弁論の賛同は得られない。法律にも詳しくなければ訴訟の弁論もできない。キケロー(前106~前43)は既存の弁論術を批判し、有効な実践弁論の復権と哲学(ストア派)の再結合を説く。この対話編は鋭い論戦を張り、現代のヒューマニズムにも通じる。2023/09/23

roughfractus02

10
紙や電子の媒体を通して本書を読むと弁論は修辞のゲームになる。本書で対話する弁論家たち(アントーニウス、カエサル、カトゥルス、クラッスス、コッタ、スルピキウス、ムーキウス)と著者自身は、民衆の前で演説し対立する相手にその身と命を晒した。ギリシャに留学した著者はその学問を尊重しつつローマが弁論において勝るという確信があった。その根拠は、弁論が知識でなく経験によって叩き上げられる学だという点にある。存在論が神秘的経験から離れて体系化するギリシャに対し、著者はローマの経験による認識と実践の学を打ち立てようとする。2022/05/18

有沢翔治@文芸同人誌配布中

8
まだ咀嚼しきれてないかもしれないけど、古代ギリシャ、多分、実践面としてはソクラテス、理論面としてはアリストテレスの弁論術をキケロなりに体系化しようとしていたのでは? 法律とか生き方を中心に考えるローマ人と、万物の根源について考えるギリシャ人(あくまでも傾向として)。ギリシャ人のほうが好き。2016/07/21

buuupuuu

7
『ゴルギアス』『パイドロス』を読んだので、キケロも読んでみる。プラトンやアリストテレス等の哲学者に敬意が払われつつも、基本的には弁論家側の観点から談話が進められる。弁論家は実践的な文脈に置かれているから、専門知識もしくは真理との向き合い方や、聴衆の情念へどう訴えるかということなどについて、学術的である哲学とは異なった態度を取らなければならないことが登場人物の口から語られる。大げさな言い方になるが、実践的観点からの知の再編とでもいうべきものが、本書のポイントなのかもしれない。2021/08/01

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