出版社内容情報
嫉妬にかられて妻を殺害した男の告白という悽惨な小説．殺人事件にまで発展した嫉妬心が，夫の心の中でどのように展開していったかをトルストイは克明・非情に描き出している．その間，恋愛・結婚・生殖など，すべて性問題に関する社会の堕落を痛烈に批判し，最後に絶対的童貞の理想を高唱する．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayumi
19
トルストイはこの作品についてあとがきでいろいろ解説しているが（肉欲に対する厳しい見方）、私は、嫉妬深い男の大仰な屁理屈と自己弁護にしか思えなかった…。奥さんは無実でしょ…。シェイクスピアのオセロを思い出した。そして、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」を是非とも聴いてみたくなった。2018/06/20
くみ
17
【海外作品読書会】結婚とは、愛とはという普遍的なテーマをガツンと提示。汽車の中で主人公に妻殺しを告白するポズドヌイシェフ。結婚1週間目から不仲、凄まじい喧嘩は絶えないが、肉体的欲求に従って束の間の仲直りを繰り返す殺伐とした毎日。妻の不義疑惑より彼の葛藤、嫉妬、独占欲、虚栄心、プライドなどが剥き出しに表現されるが、怒りや憤りに身を任せても静謐な客観的態度と考察で自分を正当化しない。あとがきにはトルストイ自身の回答も突きつけられる。全てに共感はできないがその強固な意志に畏怖の念が起こった。2018/05/27
アトレーユ
5
再読。やぱ、いいねぇ。トルストイのくせに短い(笑) 精神性の愛と肉体の愛。是か非かの二択にわけるとこに無理があると思うが、ストイックな理想を求めつつ、肉欲あるいは所有欲を求めてしまう現実に苦しむのもまた人間。これを読むとスタンダール『恋愛論』が読みたくなる。2015/05/12
アリョーシャ
4
トルストイがその解像度で殺しの場面を描くから、精神をやられた。2020/12/06
うらなり
4
トルストイはまじめなひとだなあとおもいました。2020/03/29
