出版社内容情報
暴力を否定し,調和的な愛を強調するこの作品は,作者最後のかつ最高の傑作で雄大な構想,複雑で緻密な構成,人間精神の深刻な把握,また人類の苦悩に対する深い理解と愛情とをもつ.淫蕩なフョードルを父に持つ三人の兄弟を主人公に,悪夢のような一家の形成から破滅に至るまでの複雑多岐な内容を短時日の事件の中に描き出す.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
106
本作の最大の謎となる事件に3巻にしてやっと辿り着くことができた。これまでのエピソードはそのための伏線であったのかもしれないがそこにこそドストエフスキーの意図がふんだんに練り込まれているのだと感じることもできる。言わずと知れた、重厚で圧倒的に読み応えのある逞しい小説…様々な種類の傲慢な人間がつぶさに描写されており、身につまされるところもあり、読後は自然と1人の謙虚な人間にならざるを得ない。2021/10/31
syaori
61
長兄ミーチャの抱える葛藤が示される巻。高潔を求め改悛を誓いながら卑劣な所業を止められなかった彼は、父親殺しの嫌疑という「鉄槌」を受けて叫ぶ、「侮蔑の苦痛を引き受けます」「苦しんで自分を浄めたいのです!」 この彼の姿が心を打つのは、彼の葛藤が「人間の」葛藤だからなのだと思います。私たちは皆、残酷で悪党で卑劣で、でも「よい人間」なのだから。ゾシマ長老は、人がこのことを了解すれば、自身の陋劣を「わが身に引き受けて」「ほんとうに」苦しめば「天の王国」は現出すると言ったけれど、それは実現するのでしょうか。次巻へ。2020/07/06
ヒロキです
21
ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟3巻目。 親子で愛人を巡って戦っていたフョードルとドミートリイに決着が着いた最中、父フョードルが殺されドミートリイは殺人容疑で逮捕されるというあらすじ。 ドミートリイのこれまでの行動からすっかり犯人扱いされ、ドミートリイの弱っていく様子は多少同情してしまった… 犯人がいったいだれになるのか? いよいよ物語は架橋を迎える!最後の巻も楽しみだ。2020/04/05
tokko
15
乱痴気騒ぎの絶頂を迎え、ついに逮捕。この大転回が(筋を知っていても)ハラハラする。ミーチャにとって旗色の悪い状況で予審を終え、アリョーシャとイリューシャの話題へと転じてゆく。2015/03/29
翔
14
3冊目にしてついに、と言うべきかようやくと言うべきか事件が起こった。3分の2くらいはミーチャ(とグルーシェンカ)を中心に話が進み、残りはイリューシャとコーリャ(とアリョーシャ)を中心に。コーリャみたいな子いるよなーと思いつつ、要らんことしとらんでええから行ったれやと思ってしまうのは自分が大人になってしまったからだろうか。ミーチャとグルーシェンカについては、グルーシェンカが手のひらをぐるぐる回しすぎててもはや何が本当か分からん…2022/03/21