出版社内容情報
暴力を否定し,調和的な愛を強調するこの作品は,作者最後のかつ最高の傑作で雄大な構想,複雑で緻密な構成,人間精神の深刻な把握,また人類の苦悩に対する深い理解と愛情とをもつ.淫蕩なフョードルを父に持つ三人の兄弟を主人公に,悪夢のような一家の形成から破滅に至るまでの複雑多岐な内容を短時日の事件の中に描き出す.
内容説明
たとえ幾千人幾万人が天上のパンのためにお前の後にしたがうとしても、天上のパンのために地上のパンを蔑視できぬ幾百幾千万の人間はどうなるというのか―イヴァンはキリストを否定し糾弾するこの『大審問官』のドラマを、アリョーシャの前に語ってきかせる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
109
学生時代に人物名で混乱し2巻の途中で挫折したので、今回は手帳に相関図を自分で作りながら慎重に読んだ。1巻が1番面白いという説も後半から面白くなるという説も聞いたことがあるが、少なくとも1巻より2巻の方が面白く、感心したり心拍数が上がったりする場面が多くなっていた。まだ自分の中では「読み終えること(読んだことがあること)に価値のある」歴史的大作だが、これからも少しずつ読み進め自分の血肉にしたい。2021/07/31
syaori
55
次兄イワンが弱い者、罪なき者の血や涙を贖わない「神の創った世界」など許容しない、そしてその血と涙を絞った者を赦すことはできないと語る5篇で開幕。続くゾシマ長老の遺訓と死を語る6、7編は彼の絶望への婉曲な回答のようで大変美しい巻でした。特に長老の死を巡る事件に際し、兄と同様「神の世界を認めない」と叫んだアレクセイが生と愛への信頼を取戻す場面はとても感動的。「カラマーゾフ的の力」とは兇暴な生活欲。自己の陋劣や世界の不合理に幻滅する彼らは生を欲し生に苦しむ。アレクセイは力の方向を得たけれど、他の二人は?次巻へ。2020/07/03
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27
図書館*愛と救済の物語・第二巻*文豪ドストエフスキーが贈る、超個性的な三兄弟の話。今回は、徹底した無神論者の次男が、神に敬虔な三男に"神(=西洋の社会基盤、日本では常識観念に相当)"が本当に疑う事も許されない程、確かなものなのか?その真偽を徹底追及する――日本版ドラマが放送されましたが、個人的には『お金』よりも『常識観念』で取り扱った方が、よっぽど本書の苦悩、葛藤に近しいのでは?と勝手に思ってます。疑う事が許されないからこそドラマが映える…(笑)それにしても、ここで長老ワンマンショーとは、焦らしてくれる!2013/03/23
tokko
17
「大審問官」と「故大主教ゾシマ長老の生涯」を含む、最も読み応えのある第2巻。一つ一つの挿話がヘビーで独自の個性を持った小説のようだ。グルーシェンかをめぐる親子の確執もいよいよ破局に向かうのか。しかし「一本の葱」は新潮文庫で読んだときは気づかなかったなぁ、ぼんやり読み飛ばしてしまったのかな…。2015/03/17
ヒロキです
16
カラマーゾフの兄弟第二巻。 今まで断片的なことしか知らなかったドミートリィ、イヴァンについて性格が詳細に描かれるようになった。個人的にドミートリィは増増父に似てクソヤローで嫌になり、イヴァンは良くいる大学生のような感じがいて親近感を覚えた。三男のアリョーシャはどちらかと言えばイヴァン寄りか。しかし環境違うからこそ、こんなバラバラな性格の兄弟が産まれたんだなと思った。物語全体としてはゾシマ長老の死、回想が描かれている。全体的に二巻は宗教色が強い本であった。三巻が楽しみだ。2020/02/26