出版社内容情報
暴力を否定し,調和的な愛を強調するこの作品は,作者最後のかつ最高の傑作で雄大な構想,複雑で緻密な構成,人間精神の深刻な把握,また人類の苦悩に対する深い理解と愛情とをもつ.淫蕩なフョードルを父に持つ三人の兄弟を主人公に,悪夢のような一家の形成から破滅に至るまでの複雑多岐な内容を短時日の事件の中に描き出す.
内容説明
貪婪淫蕩な父フョードルの血をうけた三兄弟―激情にまかせ放縦無頼の日々をおくるドミートリイ、徹底した無神論者の理性人イヴァン、そして無私の愛にみちた敬虔純真なアリョーシャ。僧院での一族の会合から、雄大深遠な思想のドラマの幕はあがる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
90
6年前に2巻途中で頓挫した超大作に再挑戦。前回より登場人物に感情移入でき、ストーリー展開や人物描写を楽しめた。兄の婚約者を愛してしまった弟が、いつもの冷徹さを失い感情を露わにするところには男の色気を感じてどきっとした。自分でも自分の本心が分からないまま分かりきったようなことをヒステリックに叫ぶ女性の心が痛いほど理解できた。前回読んだ際に心に残った『美は全ての矛盾を超越する』という文は『美の中では両方の岸が1つに出会って全ての矛盾が一緒に住んでいるのだ』という文を自分で解釈してたらしい。再読って面白い。2020/08/31
syaori
70
1巻から引き込まれます。色情狂で卑劣で吝嗇な父から生れたカラマーゾフの息子達。その生い立ちや父子、兄弟の抱える金や女性を巡る物語を追ううちに、だんだんと彼らの抱える苦悩も浮かび上がるよう。「極道な真似」をやめられない自分を卑しい虫けらと言うミーチャは叫ぶ。「我々カラマーゾフ一統はみんなこういう人間だ」! この言葉が胸に響くのは、人はすべてカラマーゾフの一統だからなのだと思います。欲望と良心に引き裂かれる心、弱い者や善良な者が救われない世界の不条理に絶望する魂。カラマーゾフの苦しみに答えはあるのか。次巻へ。2020/07/01
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37
図書館*愛と救済の物語・第一巻*全てはある一族の会合から始まった、、、貪婪淫蕩な父フョードルの血をうけた三兄弟…激情家の無頼漢ドミートリイ、無神論者の理性人イヴァン、そして慈愛に満ちた敬虔純真なアリョーシャ。世紀のドラマは、こうして幕を開けた!――実生活に密接に関わっている宗教観。私たち日本人の感覚からは遠いものかもしれないが、神と社会常識、各々を"社会の基準"として捉えると、疑う事も否定する事も許されない"常識(本書では神)"の共通構図は興味深い。案外、日本は常識という神の信仰国なのかもしれません(笑)2013/03/22
Vakira
36
8年ぶりに再読。8年も前だがストーリーは殆ど覚えていた。前回は亀山郁夫で今回は米川正夫訳、あまり変化は感じず。強烈な人間ドラマを再び堪能。ストーリー判っているので人名で混乱することなく、落ち着いて楽しく読書できた。前回は登場人物の語りについて行くのが精一杯であったが、今回落着いて読むとかなり宗教色が強い。フョードル、イワン、スメルジャコフ無神論者の様だ。いつも無口なスメルジャコフの語る神父の話。ある神父が戦争により、他宗教の国に捕らわれる。改教すれば命は助けると言われるが、改教せず殺される。これって・・・2015/09/24
tokko
25
岩波文庫でもう一度挑戦。新潮文庫よりも格段に読みやすいのだけれど、そう思うのは僕だけだろうか?第1巻からすでに暴走気味のミーチャと冷徹な無神論者イヴァン、アリョーシャ、フョードルのハチャメチャでカラマーゾフな世界が楽しい。続きはどうなるんだったっけ?2015/02/21