岩波文庫
少年少女

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  • サイズ 文庫判/ページ数 100p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003254318
  • NDC分類 953

出版社内容情報

収められた十九編の短かい文章はすべて,あどけない子供たちの単純で無邪気な生活を描いたもの.これによって作者は,童心の世界を見失った世の大人たちには,さながら覗き眼鏡をみるように数々の懐しい思い出を思いおこさせ,また明日に生きようとする少年少女には優しい有益な忠告を与えてくれるのである.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

121
フランスの少年や少女の生活を描いた短編集。本当に美しい本だと思う。アナトール・フランスのふくよかで味わい深い文章、郷愁を誘うルグランの挿絵、詩人三好達治の達意の翻訳、この三つの要素が溶け合って、素朴な美の世界を作り出している。プロットで読ませる本ではないので、その点は物足りなさを感じるが、それを補って余りある内容を持っている。わずか2ページの作品「厩」が一番気に入った。馬を世話する少年を描きながら、子供を優しく励ます内容。作者の祈るような気持ちが伝わってきて、温かな気持ちになれる。2017/04/09

たーぼー

45
只々、ノスタルジーに浸る書でもあり、単純にそうではないともいえる。少年少女達の何気ない日常はどれも静かな時間の流れの中で瞳は輝く。そのことが余計に子供の頃に感じた言い知れぬ不安を忘却の彼方から呼び寄せ少しぞっとする。アナトールの描く子供達は自然の前では全くの無力であると同時に自然にとてつもなく近い神秘性の存在をも主張する。これは大人になるにつれ汚れ荒む心への自戒を求めているというより過去と現在はどこで切り離されたのか、否、今も結びついているのか、の問い掛けがなされているように思えた。大人に読まれるべき書。2016/11/13

ころこ

41
芥川龍之介に出てくるあの作家の童話集。彼のテクストから彼の限界を論じるより、本書を読むことの方が得心する。三好達治が訳した各数ページずつの童話で、話の筋を上手く表現している扉絵が印象に残る。「彼は今、神様に倣った真の芸術家たちが覚えるような、恍惚とした気持ちを味わっているのです。」童話とはいえ、作者の思想は汲むことができる。神は死んだ20世紀には、そもそも「芸術」という表現自体が困難だ。「芸術」という言葉を避けて「アート」や「美術」と表するのは、表現の目的にイデア的な意図が先立つからではない。2023/01/07

なる

29
フランスの詩人アナトール・フランスの描く、何気ない少年少女の生活を切り取った19作品になる短編を収録している。そのどれもが長くても10ページ足らず、短ければ見開き2ページで終わるような非常に短い物語で、童話のように大きな変化が訪れるわけでもなく、普段の日常から逸脱しない、純粋に子供の頃に起こったであろうエピソードを淡々と描いている。読者側はその少年少女の頃に戻ったかのような感覚になるかもしれない。大人になれば薄れるような儚い感覚。紫陽花の花を口に含もうとして飼い犬から吠えられる『マリ』のエピソードが好き。2023/06/28

nagatori(ちゅり)。

23
アナトール・フランス著、三好達治訳(もうこの二人のタッグだとわかった時点でわくわくした)の、美しく気品に満ちた短篇集。何も起こらない子どもたちの日常、そのなんと幸せな事か!教訓がちょいちょい挟んであるけれど、けしてそれも高圧的ではなく、優しく諭されている気がして心地よかった。今この物語群を読んでいるのは大人の私なのか、それとも記憶の彼方から一瞬蘇った子どもの私だろうか?カトリーヌの花束、想像しただけでふわぁっと野の花の薫りが本から舞い上がりそう。2020/05/03

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