出版社内容情報
妻の情人を妻の面前で生きながら壁にぬり込める貴族の話「グランド・ブルテーシュ綺譚」,上官に妻を奪われた軍人が不貞の妻もろとも上官をやき殺す話「復讐」,中世フランドルに一夜出現したキリストが最後の奇蹟をおこなう話「フランドルの基督」,盗癖あるわが子を海に投げ,己れは巌頭に坐して子殺しの贖罪に苦行する話「海辺の悲劇」など4篇.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホームズ
22
バルザックは初めて読んだけど読みやすいし雰囲気が良かった。『海辺の悲劇』『フランドルの基督』が好きだけど他の2作品も良かったと思う。2013/07/17
藤月はな(灯れ松明の火)
18
表題作のそうしなければ解決できなかったという救いのなさに愕然とします。そこに神の救いはなく、人間がどう決断していくのかで決まるという自分ではない「他者」との相容れなさが募ります。2012/10/11
しろ
12
☆6 バルザックはおそらく初めて読んだ。舞台の描写など、幻想的な作品ではないはずなのになんとなく怪しい雰囲気が漂っている気がする。終わりの切り方といい、サスペンスチックなところもあり楽しめるところは楽しめた。でも主題に割くページが少なかったりと、難しいところもあったかな。2013/08/29
みつ
9
短編4作を収録。『復讐』以外は初読。短編とはいえ始まりは入念な描写で、なかなか本題にはいらないのはいかにもバルザックらしい。『グランド・ブルテーシュ綺譚』『海辺の悲劇』は、昔語りの形式が物語の枠組みとなる雰囲気を醸し出し、中盤からは一挙に結末に向けてなだれ込む。1934年初版の文字組みそのままの復刊本のため正字・旧仮名であるが、1ページ15行の、文庫にしては余裕のある組み方でもあり、文章の調子もどこか幻想的な作風によく合っている。裏見返しであけすけにネタバレを行なっているので、眼をそらして本文に進むべし。2021/09/16
qoop
4
スリラー風味を備えた寓話四編を収めた短編集。個人的にバルザックは長編の人という印象があるが、短編も良いなぁ。特に構成と筋立ての巧さが際立つ〈グランド・ブルテーシュ綺譚〉、着地点の見えない展開が終盤で一気に爆発するような〈復讐〉が印象に残った。2013/07/17