岩波文庫
日月両世界旅行記

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  • サイズ 文庫判/ページ数 480p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003250617
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ロスタンの筆により一躍舞台の英雄となったシラノ(1619‐1655)は,17世紀フランスの詩人,小説家.剣をとっては無双,決闘すること数知れず,戦争に参加して重傷を負い,文筆生活に入る.梁の墜落により不慮の死をとげるまでの36年の生涯は,波瀾重畳,奇言奇行にみち,その文学もまた痛烈な批判諷刺にみちている.

内容説明

『日月両世界旅行記』は、月世界と太陽,ロケットや気球まがいの着想、鳥の王国、別世界の住人との対話など、奇想あふれる二篇の滑稽譚、天地創造、霊魂不滅とキリスト教思想の枠を次々に破壊し、17世紀フランスの社会と制度を痛罵する、大胆な諷刺と政治観―自由思想の風雲児、〈鼻のシラノ〉の、SFに先駆けるユートピア小説、代表作。新訳。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

107
地動説にあやかり、キリスト教の人間中心主義、禁欲的道徳、神の存在、霊魂不死を否定する空想宇宙旅行記。秩序が逆転した月編は氾濫する理論を目まぐるしく展開する逆説好きらしい哲学議論が占める。太陽編は自在に姿を変える精霊、物を言う樫の木が登場するロマネスクな物語性も重視。その他、密閉容器や二十面体を駆使した旅行手段、ガッサンディの原子論やデカルト哲学を踏まえつつ追加される愛の原理、若者が依存する紙も活字もない予見的な聞く本など、曲解・誤認含めてイタリア・ルネッサンスらしい想像力の高揚が形象化された科学の啓蒙書。2023/02/18

優希

88
戯曲でも有名なシラノ・ド・ベルジュラックによるユートピア小説。SFの先駆けとも言えると思います。一言で言えば月や太陽に旅行するというものですが、哲学や世界構造についての談義の方が重みを置かれているような気がしました。天地創造などのキリスト教思想の枠を超越した世界観は、大胆な政治観にも繋がり、自由思想のあり方が伺えます。普通に読んでも驚くところが多々あったので、書かれた当時の17世紀フランスにとってはかなりの衝撃だったことでしょう。常識を破壊するようでありながら、リアリティもあるのが面白かったです。2016/11/18

めがねまる

25
前半が『月の諸国諸帝国』後半が『太陽の諸国諸帝国』で元々は執筆年も違う別々の本だったものを1冊にまとめている。一言でまとめると哲学オタな主人公が超理論で変な機械作って月行ったり太陽行ったりしてその世界の哲学者または哲学オタと哲学談義する話...だけど、出だしの18pで空飛んで45pで月に着いてる超展開を過ぎると延々!長広舌の哲学談義が続く!でもそこを我慢して読むと地球に帰ってから色々あって投獄されたり逃亡するためにまた奇抜な機械作って空を飛んだら飛びすぎちゃって太陽行っちゃったり話が進んで面白くなる。2016/06/05

壱萬弐仟縁

8
奇想天外。フランス人の著者シラノは、デカルトの『哲学原理』をラテン語で読んだというので(訳注430ページ(13))、とてつもない勉強家。237ページに1699年時点での熱気球の原点のような絵が出てくるが、空を飛ぶ物体への憧れはあったのだろうな。江戸時代にそんな憧れが日本にあったのかというと? 評者も一時期、熱気球の研究をしていたが、408ページの(40)訳注にあるように、18世紀末初めて熱気球に有人浮上に成功させたモンゴルフィエは懐かしく思った。シラノのアイディアを実現したというので凄い歴史上の業績だナ。2013/02/17

amanon

5
他の人も述べているとおり、『ガリヴァー〜』を連想させる、かなり風刺色の強い作品。この当時としてはかなりぶっとんでいたと思われる発想の数々に感心させられるものの、話の流れが悪くて、ストーリーを追うのがちと困難で、なかなか素直に楽しめなかったというのが正直なところ。解説にもあるように、完全な形で出なかったという事情も影響しているのだろう。著者の納得いくまで推敲がなされていれば、その印象もかなり変わっていた筈。残念。個人的には人間並みの知能を持った鳥のエピソードに、手塚治虫への影響が伺えてとりわけ興味深かった。2017/08/21

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