岩波文庫
O侯爵夫人 - 他六篇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 259p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003241646
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

出版社内容情報

「ゲエテの額から詩壇の月桂冠を奪い取る」ことを熱望した作者は,ドイツの劇作家中,その天分において他に並びない才能を示しているが,しかし短篇小説の方がさらに純粋にかつ独自の詩才を発揮しているといわれている.作者は,作品中に自己の感情や観照を差し入れず,通俗小説の虚妄を許さず,すみずみまで詩的真実で貫き通している.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

9
以前、東京創元社のクライストの「女乞食」が収録された「怪奇小説傑作選5」を読んでいた時に通りすがりの男子先輩に「クライストを読んでいるんだ!」と声を掛けられました。そしてその先輩から「クライストなら『チリの大地震』もお勧めだよ!」と薦められました。傍観的に人々の心の移り変わりや背景に描かれた描写が逆に淡々としているがゆえに薄ら寒いものを感じずにはいられませんでした。2011/06/13

松本直哉

3
クライストの簡潔な乾いた文体が驚天動地の悲劇的展開を鮮やかに描き出す。「聖ドミンゴ島の婚約」独立前夜の緊迫するハイチ(聖ドミンゴ島)を舞台に白人グスタフと現地の混血の娘トーニーとの悲恋を描く。進退きわまる状況の中でやむなくグスタフを裏切る形になるトーニー。グスタフの絶望。しかしトーニーは身を挺して彼を守ろうとしたのだった。彼女を射殺してしまったあと真実を知るグスタフ。「どうして私を信じてくださらなかったの」というトーニーの臨終の言葉があまりに重い。後半のドラマチックな展開は手に汗握る切迫感。読後しばし呆然

uchiyama

2
随分昔、ロメールにも初見では唖然とさせられた(そして狂って何回も観た)ものだけど、これ読むと、ショットのリズムの魂を震わせる感じ、原作と見合ってる、と。(今すぐまた見返したい…。)それにしてもクライスト、これは当然もっと早くに読んどくべき作家で。とにかくどれも凄い。この古めかしい訳でも凄さは充分伝わってくるけど、若い頃から原文で読めるよう、勉強すべきだった。作家が、気取って頭でっかちに抽象的なアナキズムを語ったりするのとはまったく別。体質が筋金入りにアナーキー。それを組織する細胞としての言葉が刻むリズム。2024/04/14

feodor

2
クライストの短篇7篇。おどろおどろしい雰囲気があるのだけれども、最初の表題作はいまひとつぴんと来なかった。 「O侯爵夫人(Die Marquise von O..., 1808)」。なんというか、これはよくわからなかった。いや、筋はわかるのだけれども、なんというか、感情がわからないというか。文化の違いといえばそれまでだけれども。 「チリの地震(Das Erdbeben in Chili, 1807)」。これは有名な作品。地震の壊滅的被害の描写など鬼気迫る。そして、クライマックスシーンの妙に客観的な描写と、2010/03/20

ミスター

1
特に『チリの地震』が凄まじい。この作品のスピード感は映画の『宇宙戦争』に匹敵する『O公爵夫人』でも見られるように当時の性愛思想を題材にしている所があって、愛と隔たりが壁という表象でもって表現されているのが特徴的。また『女乞食』には違った奇妙さを感じた。簡潔でありながら事件の内実を考えようとすると分からなくなっていくのはカフカによく似ているのではないか。特に今作は暗闇の恐怖が描かれているのだが、この作品にもそして全ての作品が内面への批判に向けられている。2018/06/30

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