出版社内容情報
デフォー(一六六〇?‐一七三一)のもう一つの代表作『ロビンソン・クルーソー』と同様,彼はこの作品でも女主人公になりきって,彼女のたどる人生を,運不運を,事実に即するかのように描いていった.彼の作品は作者自身の分身であるとともに,勃興しつつある資本主義の担い手であるイギリス中産階級の精神を代表するものとなった.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
115
デフォーのもう一つの傑作。牢獄で生まれて孤児院に行かず普通の生活をすることができたモル・フランダースの幼児時代から42歳までの波乱の人生の前半まで。現代小説にそのまま移行しても十分通用するようなスジであり、女性がひとりで這い上がっていくための過酷な条件は「万古不易」である。一方、駆け込み寺的助産婦もいたりして18世紀初頭であるものの社会のニーズを処理する仕組みもそれなりに備わっていたことが分かる。主人公のモルは美人で賢いが運のない女性。その女性がどうやって荒波を乗り越えるか、下巻が楽しみだ。G1000。2023/11/04
テイネハイランド
12
"ノベル(小説)"ジャンルの草創期の文豪ダニエル・デフォーの作品。自立する道がほぼ閉ざされた18世紀の英国人女性の波乱万丈の生涯を描く。語り手である女主人公の視点に完全に寄り添わずときには冷めた感じでその愚行などを描くデフォーの描写は、「ロビンソン・クルーソー」でもおなじみのものだが、今日読んでもなかなか新鮮。全体的にいって、微妙に下世話な感じが伺えるのが人によって好き嫌いはあるのではないかとも思いますが、私は結構好きです(G1000)。2016/12/18
あなのあん
3
ロビンソン・クルーソーはお金が何にも役に立たない話だけど、こちらはお金さえあればなんだってできるという考えに基づく女性の話、というのが興味深いなあと。2015/07/31
刳森伸一
3
下巻はこれからだから最終的な判断は保留するけど、今のところ『ロビンソン・クルーソー』より面白い。2013/03/26
takeakisky
1
近頃古い本ばかり読むから純真度が上がったのか、ぴったり300年前のお話に、けしからん、とか呟くようになってしまった。冗談はさておき、喜怒哀楽を大分揺り動かされる説得力はさすが元アジビラ書き。煽情的にあっちへぐんぐん、こっちへぐんぐん連れ回される。まぁ説教くさいしこれみよがしなのが鼻につくけれど。どこまでも巡り合わせのせいで転落していくフランダーズ。そこにはとおりいっぺん以上の罪悪感も悔悟の念もなく、その両手放し感が清々しい。出生から42歳までで上巻了。既に何度結婚して何人出産したか数えられなくなっている。2022/02/13