出版社内容情報
昔インドの徳の高い王が,ある大学者に自分の3人の王子の教育を頼んだ.そこで学者は寓話を聞かせる…….「ヒトーパデーシャ」とは幸せをもたらす教えという意味で,本書は一種の処世訓集であるが,数かずの寓話のうちに,読者はかざりけのないインド民衆の素顔,道学者風でない生活の知恵といったものを見出すにちがいない.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
15
2段組、上下。 学問知識とは、 節度(傍点) を言うにほかならず(60頁下段)。 処世の学を知る者は、 攻撃受くるも亀のごと、 身を縮めては耐え忍べ。 されど一度時来れば、 猛蛇(もうだ)の如く立ち上れ(172頁下段)。 心境としては、機が熟するまで待つ ということか。 なかなか機はやってこないけども。 〝対等講和〟はあくまでも、 等しき立場の講和なり。 贈与によりて成る和議は、 〝贈与講和〟と呼ばれたり(256頁下段)。 2014/05/28
in medio tutissimus ibis.
4
所謂枠物語形式。本筋の途中でたとえ話の解説に挿話が入りその中に更に挿話が入ったりして無駄に込み入ってるように見えるが、それぞれの話は単純。詩句がいくつも並んでる場合は最初の一つだけ読んであとは飛ばしても構わない。後半の「戦争」と「講和」の章は話が続いていて、『二―ティサーラ』を物語風にしたような感じ。戦後処理も戦争と同じ重さという考えなのか。孔雀のスパイだった烏は「雲の色」という名前だから白い烏だったのだろうが、王白鳥が大臣にいさめられても彼にやたら甘かったのは白いもの同士のシンパシーがあったのだろうか?2018/08/07
isao_key
4
著者のナーラーヤナは西暦800年から900年頃の人で、今のベンガル地方に住んでいたと考えられている。内容についてはまえがきと解題に本書は、「為になる教え」、「幸せをもたらす教え」の意であり、広くは国王として国を治めていくための智慧を述べた世俗的な教訓の書とある。教訓といっても道徳的教訓ではなく、動物たちの語る寓話を通じて、この世において成功をかち得るためにはいかにすべきかということを教える教訓である。本文の地の文が七五調の訳がされているので、リズムよく読むことができる。訳注も実に細かく解説してくれている。2014/11/18