出版社内容情報
社会革命運動の高揚に伴う激しい弾圧の中で,不安定な心境にいた魯迅が思い出に託して書いた自伝的回想記.悲憤と諧謔をまじえた魯迅一流の文章を知るに好個のもの.『犬・猫・鼠』『阿長と山海経』『二十四孝図』『五猖会』『無常』『百草園より三味書屋へ』『父の病気』『瑣記』『藤野先生』『范愛農』の十篇より成る.
内容説明
魯迅の自伝的回想集。革命運動の高揚に伴う激しい弾圧の中で不安定な心境にあった魯迅が、幼年時代から日本への留学、帰国、そして辛亥革命後北京へ出るところまでを描いた10篇に、「小引」「後記」を付す。「藤野先生」「犬・猫・鼠」「二十四孝図」など10篇のどれをとっても、悲憤と諧謔をまじえた魯迅独特の文章を知るのに格好のもの。
目次
小引
犬・猫・鼠
阿長と山海経
二十四孝図
五猖会
無常
百草園より三味書屋へ
父の病気
瑣記
藤野先生
范愛農
後記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
64
『藤野先生』、『瑣記』、そして『父の病気』から、太宰氏の『惜別』の件を読み取れる。印象的なのが、”解説”で垣間見る師の魯迅氏への思い。心のつながりは無論健在。存在感があったのが阿長。隠鼠と山海経。精一杯の著者への愛情表現を感じる。色絵という観点では『後記』。著者の作品の中でも「二十四孝の挿絵」。諷刺と冷嘲・・・、郭巨などの批判の根底かもしれない。作品としては『范愛農』を挙げたい。出会い時の誤解から生じた諍いを経た再会。育む絆に応えられない時勢。最後の文章に痛悔が滲む。2018/08/18
阿呆った(旧・ことうら)
18
意外にも、真面目に屁理屈を言っているような、プッと吹き出す面白さがある。『阿Q正伝』で有名な魯迅の自伝的回想記。1925-27年北京から厦門(アモイ)、広東へと移動しながら書かれたもの。当時の中国の生活が垣間見える。2015/09/19
壱萬弐仟縁
10
ルーシュンが46,7歳頃書いた自伝(解説121頁)。執筆当時の時代背景は1925年の5・30事件頃。「無常」では、「生きることの苦しさを思えば、無常必ずしも悪いお客さんとは限らない」(50頁)。無常の方が人生苦に耐えるこころをつくるか。2014/02/13
Hideki Ando
3
有名な藤野先生の他にも阿長の話や陰無常といった心に残る名作ばかりだった。 今度は野草を読んでみたいと思う。2017/08/05
k_samukawa
1
素晴らしかった。これを品切れにしとくあたりは岩波文庫も大したことないな。2013/08/13