出版社内容情報
童話を単に子どものためのよみものではなく,おとなにも通じる永遠の童心に訴える文学ととらえた小川未明(1882-1961)は,創作童話に新生面を開き,数多くの傑作をのこした.「眠い町」「牛女」「金の輪」「赤いろうそくと人魚」「野ばら」「殿さまの茶わん」「兄弟のやまばと」「二度と通らない旅人」等32篇を収録.挿絵多数.[43]
内容説明
創作童話に新生面を開き、数多くの傑作を残した小川未明。「眠い町」「牛女」「金の輪」など31篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
41
物語作家としての作為はいたるところに工夫として表れ、読み手に得も言われぬ心地よさを与えてくれます。しかし、不思議に一つの物語を読み終えたとき、人の手を介して現れた作品に思えないのです。神話や伝説、昔話のように「あるものは、あるし、いる者は、いる」そのうえでの出来事、人の世のありようが水のように流れるのです。水はあるときは清く、あるときは濁りますがその性は変わるものではありません。水の変化を見るような未明の童話は水のように心に沁みます。小川未明という名はまさにこの芸術家の本質を表しているように思われます。2019/02/08
にゃおんある
40
さかずきの輪廻。死んだあとになにが残るのだろう? 利助の拵えた薄手のさかずきか、あるいは不動産とか車とかなのか。あるいは遺伝子と言った方が殊勝なのかしら。物がはびこり、本当によいものが残る。知られざる名器。最近古い腕時計を買い、百円ショップのベルトを巻いていたら、職場の人からいい時計ですね、と気づかれました。国産のあまり知られないメーカーですが機械はIWC並みの装置の入ったものです。ほんの短い間の出来事でした。コストを考慮すれば仕方のないことです。器の中の魂、人生もまた束の間、わくらばな吐息の跡。2018/05/02
shikashika555
37
「童話集」ではあるが、「子ども向け(子供騙し)の無害でハッピーエンドなキラキラした希望と平和に満ちた話」ではない。 今よりも人の命が軽く 人の死や別離、貧困や差別が身近にあった頃の、日常と、日常のすき間に見える別世界や怪異との接触をお話仕立てにしているような趣。 代表作は「赤いロウソクと人魚」。 ひとの善性を信じ、良心に沿って生きたであろう作者による、やさしくてかなしい童話集です。 2021/01/08
藤月はな(灯れ松明の火)
22
優しかったり、シビアだったり、皮肉だったり、小川未明氏の童話は心に色々な形で響くものがあります。主に文明発達と人間性の醜さを自然のおおらかさと童心の持つ素朴さを対比させた作風が多いように感じられました。押絵も素敵でした。2011/12/18
しーふぉ
15
野ばらを読みたくなって手に取りました。読んでいて哀しみを少しだけ癒してくれる野ばらの存在が救いになっている。2015/09/06