岩波文庫
蜜蜂/余生

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 219p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003105177
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

「四十年間,あなたは蜜蜂のように,家のため働きづめに働いて死んでいった」――半痴半狂の長兄を家長とし,紛糾のたえなかった中家を一身に背負って“家”の犠牲となった兄嫁.孤独でやさしかった兄嫁の晩年をしのぶ随筆「蜜蜂」は,悲しく美しい詩にみちている.姉妹篇「余生」と併せ一書とした. (解説 生島遼一)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

97
きめ細かな美しい文章が、心に響く随筆。想像を絶するような苦しい人生を生きた兄嫁への鎮魂の書だと思う。兄嫁への想いがあふれ出す箇所は、まるで恋文のようだった。中勘助は本当にデリケートな心を持っていたのだろう。そのような繊細な人は生きにくいこともあったに違いない。それを理解してくれる人が、兄嫁だったのかもしれない。二人の関係は魂の伴侶と言う言葉がふさわしい。恋愛とは別の心と心が深くつながっている、このような男女の関係があっても良いと思う。2017/08/26

こばまり

68
読んでるこちらがぽーっとなる程の恋文なのである。嫂への。捨石にまでなって護らなければならない家族とは一体何であろう。また、病み疲れた兄金一の胸中や如何に。美しく可憐な文体ながら、何やら不穏な気持ちになる作品だ。2019/01/09

にゃおんある

30
不条理の中に生き、不条理の中に死んでいく。蜜蜂のように当たり前で、なにかの養分みたいだ。人格者がくだらない人間のために犠牲になる、そう躾けられる、みんなそうだったし、これからもそうなるだろう。中は試みたんだと思う。試みて、挫折して、また試みてを繰り返す。その原動力が、慈しむ心か、愛する心か、いずれにしても尊い感情だと思う。卯の花に蜜蜂、そんな場面をみたらそっと手を合わせたい気持ちになる。飽くまで愛し、飽くまで抗って、飽くまで試みる存在。それは素晴らしいと思うし、そうなりたいと思う。中も姉さんにも感動した。2022/06/21

mm

30
長い間「家」の犠牲となって、ミツバチのように働き続け、病を得てもやはり「家」のために出来ることに全力以上を尽くした嫂。その姿を愛を込めて、感謝を込めて、自責の念を込めて、嫂の存在を確かなものとして留めるために、力を振り絞って書いた日記作品。嫂の死後、彼女に語りかけながら生活し、彼女の残した品物から、過去をフラッシュバックさせる時の品物の細やかさと、記憶の勢いがアニメ化したらかっこよくきまりそうな感じ。。「余生」は「蜜蜂」の本を送ってもらった人のお礼状が続いて、それが蜜蜂の内容を補強してる。2020/06/06

たぬ

29
☆4 とても清らかな文章だった。主体となっているのは病中の嫂とその死だから悲しみと無縁のわけはないのだけど、胸苦しい悲しさは感じず作者がいかに彼女を敬愛し大切に思っていたかが端々から感じ取れた。その「蜜蜂」を国内に限らず戦地の友人にも送っていること(「余生」)からも嫂への思いの強さが窺える。2021/12/03

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/108792
  • ご注意事項