出版社内容情報
六十年に及ぶ文学的生涯のなかば近くの歳月を要して成った,志賀直哉(1883―1971)唯一の長篇小説.祖父と母との不義の子として生まれた宿命に苦悩する主人公時任謙作が,やがてある平安の境地に達するまでの内的発展の過程を描く.人生と仕事の上に求めてきたものすべてが投入された,作者の代表作.改版.(解説=阿川弘之)
内容説明
京都での結婚、妻の過失、子どもの死などを経て、舞台は日本海を見おろす大山に―作者が人生と仕事の上で求めてきたものすべてが投入され、描き尽くされた、近代日本文学に圧倒的な影響を及ぼした代表作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
241
本の中の女性の名がなぜかいつまでも心に 残ることがあるが..暗夜行路を読んでいると、 「直子」という妻の名前がひどく懐かしい。 昔ながらの道徳観の中での 子供の喪失と従兄との過ち..直子という名を 聞くと、多くの人は『ノルウェーの森』の 直子を想起するだろうが...だが なぜか長い間 私の中では『暗夜行路』の直子だった 気がする.出逢いから結婚 出産 そして 過失と 赦し...時任謙作の苦悩と彷徨の日々とともに 記憶が蘇る、そんな懐かしい本だった。2016/03/27
michel
16
★3.9。志賀直哉作品の中で、唯一の長編。女のちょっとした過失が、本人の考える以上に案外と随分と、深く永く他人を傷付けている。前篇は”母の過失”、後篇は”妻の過失”に振り回される主人公。知らず自ら暗夜を選んでしまう彼の人生を愚かにも思えるが、嫌いになれない。きっと、私にもこんなマゾヒストな一面があるからかな。2019/01/12
鱒子
16
後半の内容はメロドラマのようです。しかし、文章が端麗というか、客観的で冷静というか…。格調たかいです。通俗ではなく文学って感じがします。その分、主人公の俗な感情だとか煩悶が伝わりづらかったなあ。巻末に志賀直哉自身のあとがき有り。創作にまつわる裏話が聞けて得した気分です。2015/12/27
seimiya
9
謙作の京都での生活と旅。前篇と若干テイストが異なるのは、この小説が長い時間を費やして書かれたものだからだろう。作者あとがきが興味深い。「暗夜行路」は夏目漱石の「心」の後に新聞連載される予定だった小説。夏目漱石の作品も改めて読んでみたくなった。明治・大正を生きた文豪の小説は、当時の日本の生活を垣間見ることができて面白い。謙作が茶屋でサイダーを頼むシーンが新鮮だった。2014/06/01
俊
8
心理や情景の描写が凄く良かった。2018/03/08