岩波文庫
桑の実 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 213p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784003104514
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

舞台は明治末から大正の頃の東京.主人公は身寄りのない娘おくみ.ことさらに劇的な展開があるわけではない.おくみは恋をする.しかし恋ともいえぬ淡いものである.ここに登場する人々の暮しぶり,立居振舞,会話,なべて時はゆるやかに優しく流れる.のち童話作家に転換する小説家鈴木三重吉(1882-1936)の代表作.(解説=中島国彦)

内容説明

舞台は明治末から大正の頃の東京。主人公は身寄りのない娘おくみ。ことさらに劇的な展開があるわけではない。おくみは恋をする。しかし恋ともいえぬ淡いものである。ここに登場する人々の暮しぶり、立居振舞、会話、すべて時はゆるやかに優しく流れる。のち童話作家に転換する小説家鈴木三重吉(1882‐1936)の代表作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

83
童話作家としてのちに『赤い鳥』を創刊する鈴木三重吉の大人向けの小説。お手伝いさんを職とする若い娘のおくみが主人公。劇的なプロットがあるわけではないが、深い余韻が残る作品。ふくよかで品位ある文章、物語の底に流れている穏やかな情感、登場人物一人一人に向けられた作者の優しい眼差しなど、読み終わった後は、小春日和に日向ぼっこをしているようなあたたかさが、胸の中にじんわりと広がる。2013/12/16

HANA

46
明治末あたりのある女性の日常。その女性がお手伝いに出てからそれを終えるまでの顛末が記されているが、特に事件が起こるわけでもなく淡々とした日常が綴られている。それでもその家の主人や男の子との交流、周りの人達との静かな交流、そして静かに過ぎ去っていく日々がなんとも言えず愛おしく感じる。作者の暖かな眼差しが注がれているような気もする。こういう透明感のあるというか透き通った水が流れていくような小説は久しぶりに読んだような気がするな。何となくこの日々が過ぎ去るのが惜しく、読み終えるのを少し躊躇してしまった。2013/12/28

スリーピージーン

12
主人公おくみが近く感じられて、私も彼女とは別れたくない気持ちがする。お手伝いに入った家の主人青木(画家らしい)は明らかにおくみを気に入っていて、続けて働いてほしいのだからそうすればいいのにと思うが、大正期の女の子は、とりわけおくみさんのような苦労人は、周囲の様々な事情が見えてしまって自己主張は難しいのだろう。あまりに起伏のない物語でこれを新聞小説で読ませるのはちょっと大変だ。おくみさん、きっと心を込めて蒲団を縫って去って行ったのだろう。遠い日本。大正二年。岩波文庫は昭和11年発行。その年に著者は世を去った2015/06/07

じゃがいも

11
童話作家鈴木三重吉が書いた大正2年(1913年)の新聞連載小説。当時の副交感神経の働きが高まるようなゆっくりとした生活の中で、青木さんとおくみの穏やかな会話が続きます。青木さんの躊躇いながら精一杯のおくみへの言葉やおくみが目立たぬように薄化粧する仕草などは奥ゆかしく美しくもありもどかしくもありです。2019/09/27

Masako33

8
洋行帰りの画家と、一時的にその家に女中として住んだおくみ。西洋の小説なら危険な展開になりそうな設定だが、これは奥ゆかしい明治から大正の日本。おくみの淡い秘めた想いが静かに波立つが、時は淡々と流れる。そして何も起きず静かに幕を閉じる。おくみの別れの場面が描かれていないため、余韻が残った。濃い味のモームの箸休めには最適な読書だった。ところで、大正時代の日本はパンが食卓に上るなど、家庭によっては随分とハイカラだったのだなと思った。春に見に行った南薫造の絵を思い出した。2021/12/23

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