出版社内容情報
『みだれ髪』で明治の歌壇に新しい流れを導き,文学殿堂に「黄金の釘」を打ちつづけた与謝野晶子の歌は,近代を最も近代的に生きた一人の女の軌跡を,余すところなく語っていて感銘深い.本書は,昭和九年までの全歌集から自選した二九六三首に加え,晩年の歌集『白桜集』より秀歌百首を追補した. (解説 馬場あき子)
内容説明
『みだれ髪』で明治の歌壇に新しい流れを導き、文学殿堂に「黄金の釘」を打ちつづけた与謝野晶子(1878‐1942)の歌は、近代を最も近代的に生きた一人の女の軌跡を、余すところなく語っていて感銘深い。本書は、昭和9年までの全歌集から自選した2963首に加え、晩年の歌集『白桜集』より秀歌百首を追補した。
目次
乱れ髪(明治三十四年七月)一四首
小扇(明治三十七年一月)一〇首
毒草(明治三十七年五月)五首
恋ごろも(明治三十七年七月)二五首
舞姫(明治三十九年一月)八一首
夢之華(明治三十九年九月)四四首
常夏(明治四十一年七月)四五首
佐保姫(明治四十二年五月)七二首
春泥集(明治四十四年一月)四一首
青海波(明治四十五年一月)四七首〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
17
昭和9年までの全歌集から晶子自身が選んだおよそ三千首に加え、馬場あき子が晩年の歌集『白桜集』から百首を追補した歌集。晶子といえば一般にはやはり『みだれ髪』の熱き恋の血潮を思うし、わたし個人も初期の奔放で瑞々しい作品が好きだが、晶子本人は若書きの歌を島崎藤村や薄田泣菫からの影響が濃すぎ「模倣」のようであると快く思っていなかったそうで、本書でも中期から晩年の歌が多く採られている。「恋人の涙に似たる香をたててうばら咲く日となりぬ武蔵野」の如く自身の心情と自然を大胆不敵に結び付ける晶子の歌の数々はやはり面白い。2019/11/30
ken
6
率直に難解すぎると思った。自分自身に短歌を鑑賞できる素養がないことは棚上げするが、その上に何がこうも分からなくしているのか。短歌特有の寡黙さからか、時代の空気を共有できていないからか。とにかく、与謝野晶子に愛でられる人や物へのまなざしは自分のそれとは比べものにならないくらい深いのだと知らされる。もちろん、共感できるものや感動できる歌もないではない。いわゆる女性の近代化を歌ったものや恋愛ものがそれなのだが、それ以外の半数以上は解説がなければ心から味わえないうたばかりで、少々面食らってしまった。2019/05/14
shou
3
自選集+『白桜集』選。与謝野晶子といえばやはり愛の歌を恐れず高らかに、の『みだれ髪』のイメージなのだけど、あまり載せられていない。旅の歌が多かった印象。『白桜集』の夫を送った後の挽歌は、命を見つめる視線。「飽くをもて恋の終と思ひしに此(この)さびしさも恋のつづきぞ」「むらさらの魚と思ひてわれも行く海の底めく夏の月夜に」「湖の氷る初めを見し春も我れ忘れねば君も忘れじ」 2014/01/15
しょうゆ
2
随分と長い年月を要しましたがやっと読了。3000首超が収録されているお得な一冊。白桜集以外は与謝野晶子の自選とのことで、大正から昭和初期にかけての歌をたくさん選んでいるのが興味深い。「みだれ髪」時代の情熱的な歌が評価されがちだけど、晩年の歌の方が私は好きです。情景描写が本当にすばらしい。2023/04/16
katashin86
2
自選歌集。解説にあるように、おそらく一般的に代表作とされている「みだれ髪」など初期の歌集からの選出は少なく、中期・後期の、ややイメージと異なる歌のほうが多い。中でも巻末の、夫鉄幹死後に詠まれた挽歌がきわめて美しい。2019/05/18