岩波文庫<br> 惜みなく愛は奪う (改版)

岩波文庫
惜みなく愛は奪う (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 147p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003103654
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

出版社内容情報

キリスト教的ヒューマニズムの立場にあった著者が,他への愛とエゴイズムの相克に苦しみつつ自我確立への道を求めて書き綴った長篇論文.思想の発展過程が克明に描かれており,大正期の代表的知識人であった有島の,真摯な思索は今もなお人々の心を打つ.著者の文学作品を理解するうえでも欠くことができない. (解説 荒 正人)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Willie the Wildcat

66
徹頭徹尾問い続ける表題。定義と種類が基点も、そもそも論の抽象性や、育む環境と育まれる価値観が齎す”個性”。故に突き詰めると、「自己」に戻るのかと推察。五感の主体は、あくまで「自己」也。一方、読み進むごとに、”本能”に辿り着く感。善悪の問題や結果論とすることなく、もう少し心の赴くままの自然体でいたいなぁと感じる。批判を恐れず言えば、世の中”Give & Take”。支え、支えられて成り立つ生業。ふと頭に浮かんだのが、相田みつを氏の「お陰様/身から出た錆」。2019/06/21

藤森かつき(Katsuki Fujimori)

30
有島武郎の誕生日に。最初は何が語られているのか良くわからないのに、でも面白く。不思議な感覚のまま読み進んだ。感想、思想、論文、そういった類いのものらしい。愛は惜しみなく奪い取るけれど、奪われた相手は何も失わない。愛は一方通行でも良く、場合によっては相手がそのことを知らなくても構わないようだ。互いに奪い合うことが成り立った場合、恵みは二倍になる。印象的だったのは、自分の中に愛の捕虜の大きな群れを発見した、というくだり。それは芸術創作の素材として一生かかって表現してもなお余りある、外界から奪い取った愛。成程。2020/03/04

24
有島武郎には太宰治がのちに抱えるハメになった自意識肥大の問題の萌芽を見ることができ、太宰治はポスト有島武郎だったのかもしれないような気がしてくる。ただ太宰はロマンティストで有島武郎はリアリストだという所に決定的な差異があるのだなと感じる。他者を愛することはエゴイスティックな行為であり、その中で自己は立ち上がってきて来るがゆえに愛を抜きに自己は立ち上がらないがその愛は偽善的だしエゴの塊だしどうしようみたいな感じで悶々としている真摯で慎み深い有島武郎を心の慎みのなくなった野蛮な現代人の私が→2015/01/12

壱萬弐仟縁

13
「本当に弱いものは、その弱さから来る自分の醜さをも悲惨さをも意識しないが故に、その人はそのままの境地に満足することが出来よう」(13頁)。自覚の問題か。そうではない気もするが。強い人は自分の弱さを認めているのではないか? 「何物にも信頼する事の出来ないのが弱い人の特長」(26頁)。疑い深い。疑うのも学問にとっては必要な資質だが。智的生活(intellectual life 52頁)は反省の生活、努力の生活(55頁)。いきなり69頁に外界と目的の関係が、Tony Buzanのマインドマップのような感じの図。2014/02/07

てれまこし

5
大正期に流行した精神的自由主義を最も尖鋭に表現したのは、恐らく白樺派きっての理論家である有島。ここに社会の平和よりも人類の幸福よりも人格を自己目的とする徹底した哲学的個人主義が認められる。世代的には柳田や如是閑に近いが、大陸思想、特に生の哲学の影響が強いところは、後の煩悶世代の先駆者でもある。しかし、この時代でも、有島はほぼ孤立している。日本に自由主義は根付かないという不満は別の意味かもしれないが、有島の場合にも当てはまる。独仏露米の先輩たちとの対話から生れた産物であり、一部知識人外では消化しきれない。2019/03/17

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